火山対策を忘れるな、認証サーバーは社内に残しても構わない、料金相場は1ラック15万~20万円──。BCP対策に当たって、知っておくべき六つのポイントを示す。

首都圏では火山灰にも備えよ

 企業のBCP対策として意外に見落とされがちなのが、火山の噴火だ。歴史的に見て、東日本大震災のようなマグニチュード(M)9クラスの巨大地震の前後には、火山が噴火するケースが多い。にもかかわらず、噴火対策はこれまで自治体レベルでしか検討が進んでいなかった。ここにきて内閣府が2013年5月に「大規模火山災害対策への提言」を発表。国レベルでの対策がようやく進みつつある。

 噴火の恐れがある代表例は富士山だ。仮に富士山が噴火したとして、首都圏の企業にはどのような影響が出るのだろうか。火山対策に詳しい、鹿島建設の佐々木透技術研究所上席研究員は、「火山灰の降灰による交通網の遮断が考えられる」と指摘する(図6)。

図6●富士山の噴火で想定される降灰量と、火山灰が与える影響
1707年に発生した「宝永噴火」を基にした降灰量予測。この場合、首都圏の交通網は全面的にストップする
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 火山灰は数ミリメートル降り積もるだけで、視界不良や車輪のスリップが多発し、道路や鉄道が使えなくなる。1707年に発生した「宝永噴火」規模の噴火なら、首都圏の電力網や交通網は全面的に麻痺する。富士山の噴火は数百年に1度の発生頻度だが、首都圏直下型地震に匹敵する被害をもたらす恐れがある。地震などと同様に、外部のDCを利用するなどして、噴火による停電や交通網の遮断に備えておくのが望ましい。

DCの「立地」で悩む必要はなし

 BCPの一環としてDCを選ぶ際、まず気になるのがその立地だ。本社に近い都心を選ぶか、それとも地震の少ない地方にするかで悩む企業もあるだろう。

 だが結論から言うと、どこを選んでも問題は無い。DCは耐震、免震構造を採用してほか、自家発電装置を備えている。このため、地震の揺れやその他の災害による長時間の停電に耐えられる。

 そもそも大規模災害時は交通網が大混乱に陥る。近くの施設を選んだとしても、DCに駆けつけて障害を復旧することができなくなる恐れは十分にある。むしろ施設に駆けつけなくてもシステムを継続運用できる体制や仕組みが重要になってくる。

 普段のシステム運用の中でハードウエア構成を頻繁に変更するのであれば、オフィスに近い都心の施設が確かに便利だ。しかし最近、DC事業者は構成変更などの作業を代行するサービスを拡充しており、この点でも都心と郊外・地方の施設の差が縮まっている。

写真1●IDCフロンティアが実施している遠隔保守サービスの様子
写真1●IDCフロンティアが実施している遠隔保守サービスの様子
ユーザー企業は、Webカメラが映し出すラック内の状況をライブで確認しながら、保守作業員に作業指示を出せる

 例えばIDCフロンティアやTISは、ラックの前までWebカメラを持ち込み、ユーザー企業が動画を確認しながら、DC事業者の作業員に作業内容を指示できるサービスを提供している(写真1)。

 ネットワーク面でも、郊外・地方のDCの使い勝手が改善されている。ネットワーク仮想化技術の進歩によって、遠く離れた複数のDCで運用するシステムを、単一のネットワークセグメントで管理できるようになったからだ。例えばインテックは、東京と富山、大阪にある三つのDCで、同一のセグメントが利用できるサービスを提供する。異なるDCでもサブネットが同一であれば、あるDCで動作する仮想マシンを他のDCで起動し直した時に、仮想マシンのIPアドレスを変更する必要が無くなる。

 BCPとは別の視点でDCを選ぶ場合は、都心型の方が有利になることがある。例えば、ネットワークの遅延や帯域を重視する場合だ。そのような視点で、大手コンテンツ事業者が注目する常識破りのDCがある。丸の内ダイレクトアクセスやエクイニクスジャパンが東京・大手町に相次ぎ開業した「地下DC」だ。地下DCだけに、サーバーはもちろん非常用発電機なども地下にある。

 DC設備を地下に配置するのは、浸水被害を考えると常識的にはあり得ない。一方で、インターネットエクスチェンジ(IX)が集中する東京・大手町は、日本で最も通信環境の良い場所でもある。災害対策として地方のDCに待機系システムを置きつつ、本番系システムは高速な地下DCを選ぶという考え方もある。

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