過去の売り上げ実績ではなく、直近の売り上げデータを分析し、発注量を調整する──“即断即決”に挑む企業が増えている。実現のポイントは、判断に必要なデータを全て集め、インメモリーで高速処理することだ。最新のデータベース製品は、オンライントランザクション処理(OLTP)と、データウエアハウス(DWH)の両方をメモリー上で実現できる。「OLTP/DWHの統合」という理想が現実のものになってきた。

 できる限り鮮度の高いデータを集め、現実に即した判断を下したい──。リアルタイムデータの活用に向けユーザー企業の意欲が高まってきた。その背景には、データベース製品の大きな進化がある。

 旭化成グループは、独SAPのインメモリーデータベース製品「SAP HANA」を導入し、ERP(統合基幹業務システム)のデータを迅速に集めて分析できる仕組みを構築中だ(図1)。2015年の基幹システム刷新に合わせ、13個あったSAP ERPを統合する計画の一環である。

図1●インメモリーでデータ活用する旭化成グループ
インメモリーデータベース「SAP HANA」を導入。ERPのデータをほぼリアルタイムにコピーして用いることで、直近データの活用を可能にした
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 第1弾は旭化成ケミカルズのシステムで、2013年4月に稼働開始した。「従来もデータは連携していたが、四つのERP間でデータ項目やデータの細かさ、連携タイミングなどにバラツキがあった。今回、それをリアルタイムに統一した」(旭化成 情報システム部 担当部長の藤本聡氏)。

ERPとリアルタイムに連携

 旭化成が構築したシステムのポイントは大きく三つある。一つは、SAP ERP上で変更があったデータを、ほぼリアルタイムにSAP HANAにコピーしていること。SAP ERPでデータが更新されると、「SLT(SAP Landscape Transformation)」と呼ぶツールが、SAP HANAに即座に更新データを転送する。

 HANAにはマスターデータ全件のほか、「在庫」「売上伝票」「会計」の一部データ、「仕訳明細」の全データなどトランザクション系のデータもコピーしている。藤本氏は、「HANAそのものの高速性に加え、SLTによりERPとリアルタイムに連携可能なことが製品選択の大きな理由」と説明する。

 二つめのポイントは、SAP HANAが全てのデータをインメモリーに保持していることだ。ディスクへのI/Oが不要なので、ユーザーは高速にデータを参照/分析できる。

 最後のポイントは、SAP HANAがカラム(列)型テーブルを使ってデータ処理することだ。一般のRDBMS(リレーショナルデータベース)は、ロー(行)型でデータを管理、操作する。ロー型は更新や挿入・削除といったオンライントランザクション処理(OLTP)には向いているが、大量データに対する分析処理ではオーバーヘッドが生じる。「店番」と「売り上げ」など必要なカラムが少なくても、ロー型では1行全てを読み込む必要があるからだ。

 一方、カラム型は必要なカラムに絞ってデータを抽出できるので、こうしたケースではロー型に比べて処理効率が高い。

「インメモリー×カラム」が主流に

 リアルタイムデータの活用に向けて今、データベース製品は二つの方向で進化している。

 一つは、SAP HANAで見たように、インメモリーかつカラム型テーブルの併用による「OLTP/DWHの統合」だ。SAPのほか、米オラクルや米マイクロソフト(MS)、米IBMがデータベース製品の機能拡張にしのぎを削る。

 もう一つは、複数のデータソースを仮想的に統合する「データ仮想化」である。既存のDBに手を加えず、複数のDBを素早く連携できる。米コンポジット・ソフトウエアや米レッドハットなどが製品を投入し、新領域として立ち上がりつつある。それぞれの進化を順番に見ていこう。

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