ここからは、大きく「スマートデバイス」「PC(パソコン)/マルチデバイス」「電話」「ネットワークインフラ」の4テーマに分け、BYODを実現する最新ソリューションを紹介していく。個別のテーマを見ていく前に、まず全体の指針を決めるためのポイントを整理しよう。一つは「画面サイズに応じたデバイスの用途」、もう一つは「端末での業務データの取り扱い」である。
画面サイズから適切な用途を考える
BYODで利用するデバイスは、大きく(1)スマートフォン、(2)タブレット端末、(3)ノートPC――の3種類に分類できる(図1-1)。処理性能を比較すると、スマートフォンやタブレット端末はPCと比べても遜色ないレベルにある。しかし、それぞれのデバイスには適した使い方がある。ガートナー ジャパン リサーチ部門 ITインフラストラクチャ&セキュリティの針生恵理シニア アナリストは、まずは画面サイズを基準として用途を考えることを提案している。
一般的なスマートフォンの画面サイズは3.5~5インチ程度。最近は5~6インチの大型画面を持つ「ファブレット」と呼ぶ製品も登場している。ただ総じて画面が小さいため、コンテンツの作成には向かず、コンテンツの閲覧が中心となる。一方、小型であるため携帯性は高く、いつでもどこでも持ち歩ける。これらを併せると、スマートフォンのメールやスケジュールの閲覧や、チェックボタンなどの簡単な操作で済む承認などが主な用途となる。
画面サイズが5~10インチ程度のタブレット端末は、紙の文書の代わりにできる。例えば、カタログ、マニュアル、会議資料などの閲覧である。また、他人に見せやすいので、営業などで顧客に見せるプレゼン資料などにも使いやすい。ただ、物理キーボードなどがないため、やはり複雑なコンテンツ作成には向かない。
10インチ以上の画面サイズを持つノートPCは、大きい画面や物理キーボードを生かしたコンテンツの作成に向く。また、操作の自由度が高く、複数のウィンドウで作業できるため、複数の作業を同時並行で進めることも可能だ。
このようにデバイスごとに得意、不得意があるが、これは会社支給でも私有でも基本的に共通している。多くのユーザーが個人で所有していて、かつ会社に持ち込みやすいのは圧倒的にスマートフォンだ。このため、多くのユーザーのニーズは、スマートフォンによるメールやカレンダーの閲覧という利用方法に集中することになる。
端末への業務データの残し方で方針を固める
BYODを実現する手法には様々なものがあり、いろいろな観点で分類できるが、ソリューションは(1)端末にデータを残す、(2)端末にデータを残さない――という2つに分類して捉えるのが有効だ(図1-2)。どの製品やサービスを選択するのか、自社の環境に合ったものはどれなのか、セキュリティポリシーをどう考えるのか、といったことを整理するうえで大いに役立つ。
(1)は、社内やクラウド上にある業務データをいったん端末上に置いて、そこで閲覧したり操作したりする方法だ。オフラインで作業できる、応答速度などが速く使い勝手が良い、といったメリットがある。半面、端末の紛失・盗難などに備え、しっかりとした情報漏洩対策がなされる仕組みを用意する必要がある。
(2)の端末にデータを残さない方法では、業務データを社内やクラウドに置いたままにして、リモートから閲覧したり操作したりする。端末に情報が残らないため、情報漏洩がない。その一方、オフラインで作業できない、(1)に比べてレスポンスが劣る、というデメリットもある。
(1)と(2)のどちらを選ぶか、あるいはどう組み合わせるかは、デバイスの特性、業務データの機密レベル、使い勝手などを勘案して方針を決めることになる。BYODを成功させるための最初のポイントとなる。