ミサワホームがシステム改革プロジェクトを推進中だ。新たなシステム投資を凍結せざるを得なかった“失われた10年”の遅れを取り戻すため、会計や営業支援、受発注管理など10種類の基幹系/情報系システムを再構築する。全てのシステムをクラウド上に構築することで、システムのグループ統一を推進するほか、構築・運用コストの最適化なども図る。

 周回遅れからトップランナーへ――。このスローガンを掲げ、ミサワホームは基幹系/情報系システムの改革プロジェクトを推進中だ。会計や営業支援、受発注・在庫管理といった10種類のシステムを、約29億円(本誌推定)を投じて再構築する。

 このプロジェクトを通じてミサワホームは、ほぼ全てのシステムをクラウド上で再構築し、自社のデータセンターは閉鎖する。これがシステム改革最大の勘所である。基幹系をはじめビジネスの根幹を支えるシステムを、3年という短い期間で一気にクラウド化するプロジェクトは、国内ではほとんど例を見ない。

 「会社はもちろん、システム部門が飛躍する千載一遇のチャンス。上手くいくかどうかの保証はなかったが、進むべき方向は定まっていた」と、プロジェクトを率いた宮本眞一情報システム部長は語る。

失われた10年を取り戻す

 ミサワホームは現在、年間約1万棟の戸建て住宅を建築・販売している。消費税増税前の駆け込み需要もあり、2014年3月期の売上高は4250億円(前期比7.7%増)、営業利益は142億円(同14.2%増)を見込んでいる。今でこそ勢いはあるものの、これまでの10年はシステム部門にとって「冬の時代」だった(図1)。

図1●ミサワホームのシステム再構築プロジェクトの背景
図1●ミサワホームのシステム再構築プロジェクトの背景

 同社は2003年頃に経営状態が急速に悪化し、2004年には産業再生機構の下で経営再建を図ることになった。2006年に同機構の支援が終了し再建を果たしたものの、2008年にはリーマン・ショックが国内住宅市場を直撃した。

 こうした経営環境では、システムの新規投資もままならない。その結果、「多くのシステムが2000年問題対応後のままだった。グループ会社でシステムが重複していたり、セキュリティを強化する必要が出てきたりするなど、もはや放置できない状況になっていた」(宮本部長)。

 この10年間の遅れを取り戻すべく、2011年、ミサワホームでシステムの再構築プロジェクトがスタートした。「器を入れ替えても、システムの付加価値がそのままでは意味がない」(宮本部長)。そこでミサワホームのシステム部門は、三つのテーマを掲げた。(1)グループ全体のシステム一元化とコスト削減、(2)ITコストの変動費化とアウトソーシングの拡大、(3)クラウドやモバイル対応といったコンシューマーITへの対応、である。

 「周回遅れからトップランナーに躍り出るためにも、新しい技術やサービスを、臆さず貪欲に取り入れていこうと考えた」(宮本部長)。さらに、「時間をかけていては、経営環境が変わってしまい、システムの付加価値が失われてしまう」(同)ため、わずか3年間で10種全てのシステムを再構築する目標も掲げた。「細かいことは走りながら考えていけばいい、と割り切った」(同)。

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