ERP(統合基幹業務システム)は、ユーザー企業にとって最も重要度の高い情報処理システムの一つと言える。大企業を対象としたERP活用ではグローバル展開やビッグデータとの連携強化といった話題に注目が集まることも少なくない。だが、こうした取り組みを実際に進めることのできるユーザー企業の数は限られている。では、中堅・中小企業を含めた大半のユーザー企業にとって、ERPを選定する際のポイントはどこにあるのだろうか。

 今回はERPの導入社数ベースシェアにおいて常に上位に位置するSAPジャパンとOBCの戦略を通じて、ユーザー企業が留意すべきERP選定時のポイントについて考えていくことにする。

シェアデータ確認では「ERPの定義や尋ね方」を押さえることが大切

 まずERP製品/サービス導入の現状を俯瞰(ふかん)しておこう。図1は年商500億円未満のユーザー企業に対し、「導入済みのERP製品/サービスのうち最も主要なもの」を尋ねた結果である。ここではERPを「会計/販売/購買/生産といった複数のシステムを統合的に管理/運用するアプリケーション」と定義している。

図1●導入済みのERP製品/サービスのうち最も主要なもの
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 ここで注意しておくべきなのは、ベンダー側がERPとして販売していても、ユーザー企業側はそのように認識していないケースがあるということだ。特に中堅・中小企業向けのERPでは「●×●会計」「■×■販売」といったように、ERPを構成する個々のアプリケーションが単体で導入されることも多い。その場合、ユーザー企業側では「ERPを導入している」とは認識していない。このため、「この製品のシェアはもっと高いはずなのに思ったよりも低かった」といったことも起きやすい。

 ERPについては、提供する側がERPと捉えているものが、利用する側ではそうでない、あるいはその逆という状況が発生しやすく、ユーザー企業側とベンダー側の双方がその点を十分に認識しておくことが重要と言える。図1の場合には「ユーザー企業がERPとして認識しているものを対象としたERP製品/サービスの導入社数ベースシェア」ということになる(もちろん、調査目的に応じて単体のアプリケーションも対象に含めたシェアを算出することもある)。

 ユーザー企業がERP選定の候補となる製品/サービスのシェアを尋ねる際には、「ERPの定義がどのようになっており、どのような尋ね方をしたのか」「シェアの指す値は導入社数ベースなのか、出荷金額ベースなのか」といった点を確認しておくことが大切になる。

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