多くのビジネスパーソンが最も頻繁に利用する業務アプリケーションのひとつであるメール/グループウエア。円滑な社内コミュニケーションを実現するうえで欠かすことのできない基盤システムだが、あまりにも日常的な存在であるがゆえに、その強化がないがしろにされるケースが目につく。ここにきて、国内企業の間ではさまざまな課題が顕在化しつつある。
今日、企業の経営幹部に主要な経営課題を尋ねると、かなりの割合で「社内コミュニケーションの活性化」「情報共有の高度化」といったテーマが上位に挙げられる。こうした思いは、当然ながら社内のIT環境を整備する立場にある情報システム部門責任者にも共有されている。
2013年1月にITRがJIPDECと共同で実施したアンケート調査でも、IT部門が2013年に重視する経営課題として、「社内コミュニケーションの強化」を挙げた回答者は40.5%に上り、全体で2番目という高さであった(図1)。
しかしながら、そうした思いが、はたして実際のIT施策にどれだけ反映されているかといえば、疑問を抱かざるを得ないこともまた確かだ。
電子メールに過度に依存したコミュニケーション手段、1世代どころか2~3世代前のシステムがいまだに幅を利かせるグループウエア環境、部門ごとに乱立するファイルサーバー、スマートフォンやタブレットなど新種のデバイスの価値を発揮することができないネットワーク環境…、そんな悩みを抱える企業は決して少なくない。
技術革新が阻まれがちなコミュニケーション/コラボ環境
グループウエアに代表される企業のコミュニケーション/コラボレーション環境は、極めて日常業務に根ざしたシステムであり、かつ、転職でもしないかぎり他社の環境に接する機会も滅多にない。つまり、自社の環境を客観的に評価したり、他社と比較したりすることが困難なシステム領域である。
それに加えて、現場の従業員が往々にして環境の変化に消極的であるという事情もある。そうした状況が折り重なって、技術的な革新が阻まれやすいという側面があることは押さえておくべきであろう。
むろん、社内コミュニケーションのあるべき姿は企業によって異なるものであり、一口に正解と言えるような答えもない。しかし、ビジネス環境はもとより、ワークスタイル、デバイス、そしてクラウドをはじめとするネットワーク環境が大きく変化しようとしている今日、「コミュニケーション基盤の革新」というテーマを軽視してしたままで本当によいのであろうか。
本連載では、そうした国内企業の社内コミュニケーション環境の現状に一石を投じたいと考えている。