サーバー仮想化やデスクトップ仮想化を進めると、ストレージのI/O性能がボトルネックとなる問題に直面する。従来型の磁気ディスクでは性能改善に限度がある。そこで高速なフラッシュメモリーを全面的に採用した新しいタイプのストレージが相次いで登場している。

 サーバー仮想化やデスクトップ仮想化が普及するにつれ、ストレージ性能の問題が顕在化してきた。サーバーマシンの性能が十分であったとしても、ストレージI/Oの処理待ちが発生し、応答性能が悪化する現象である。

ランダムアクセス多発で性能問題に

 一般的な仮想環境では、複数の仮想マシンで1台のストレージを利用する。ストレージ内に領域を区切って仮想マシンに割り当てるので、こうした環境ではランダムアクセスが多発しやすい。だが磁気ディスクは、シーケンシャルアクセスに比べるとランダムアクセスは遅い。ディスクを回転させたり、ヘッドを読み取り位置まで移動させたりといった動作を伴うからだ。

 ストレージのI/O性能は、1秒当たりに処理できるI/Oリクエスト数を意味する「IOPS」(Input/Output Per Second)で表す。小さなサイズのデータに対するランダムアクセスの場合、磁気ディスクのIOPSは最大200程度とされる。

 サーバー仮想環境で、仮に1台の仮想マシンが60程度のIOPSを必要とすれば、1本のディスクでパフォーマンスの悪化を気にせずに処理できる仮想マシンは3台までとなる(図1)。デスクトップ仮想環境では一般にクライアントPC1台当たり15~20IOPSで設計するので、1本のディスクでは10~13台のPCしかさばけない。それ以上のPCを割り当てると、性能低下が起こるということだ。

図1●仮想化が進むにつれてストレージのI/O性能がボトルネックとして顕在化
図1●仮想化が進むにつれてストレージのI/O性能がボトルネックとして顕在化
複数の仮想マシンがストレージを共有するとランダムアクセスになりやすく、読み込み、書き込みともに処理に時間がかかる

 磁気ディスクでは複数のディスクを並列動作させて高速化する手法が取られてきたが、ディスクが増えれば相応に設置スペースや電力使用量も増え、運用コストがかさむ。磁気ディスクそのものが今後飛躍的にランダムアクセス性能を向上させる可能性は低く、ストレージ性能は仮想環境における大きな課題になっていた。

磁気ディスクに比べて数千倍高速

 こうした課題を解決できるとうたった製品が、相次いで登場している。「オールフラッシュストレージ」と呼ばれる製品だ。その名の通り、磁気ディスクを使わず、フラッシュメモリーだけを搭載するストレージである。

 例えば、「Violin Flash Memory Array」シリーズを手がける米Violin Memoryは、2013年1月に日本市場に本格参入した。同じ1月、東京エレクトロンデバイスが米Pure Storageの「Pure Storage FlashArray FA-300シリーズ」の国内販売を始めた。大手ストレージベンダーも黙っていない。米IBMは2013年4月、「IBM FlashSystem」シリーズを発売。米EMCと米NetAppも、オールフラッシュ製品を発売すると公表している。2013年後半から2014年に登場する見込みだ。

 オールフラッシュストレージの最大の特徴は、I/O性能の高さである。各社の製品は、10万~数十万以上のIOPSをうたっている。磁気ディスクと比較すると、数百から数千倍のスピードでI/Oリクエストを処理できることになる。メモリーなので機械的な動作がなく、ランダムアクセスも速い。多くの仮想マシンで1台のストレージを共用しても、I/O性能がボトルネックになりにくい。

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