アジア太平洋地域におけるIPv4アドレスの在庫が2011年4月15日に枯渇してから2年超が経過した。その後、世界規模のIPv6普及イベントとして、2011年6月に「World IPv6 Day」、2012年6月には「World IPv6 Launch」が開催され、現在も続いている。だが、日本の企業や家庭では依然として利用が進んでいないようだ。

 今回、読者モニターにIPv6の利用状況を聞いた結果、「利用していない」企業が90%を占めた。前回調査(2008年12月)でも9割弱の企業がIPv6への移行を「検討していない」としており、状況はほとんど変わっていない。利用しない理由を聞くと、「必然性がない(特に困らない)」が100件と回答者の8割弱に達した。以下、「機器の変更などにコストがかかる」が55件、「メリットがない」が46件と続く。

Q1. IPv6を利用していますか
Q1. IPv6を利用していますか
Q2. IPv6を利用しない理由はどれですか
Q2. IPv6を利用しない理由はどれですか

 なお、自宅における利用状況もほぼ同じで、「利用していない」が84.3%。最近はIPv6に対応したインターネット接続サービスも増えてきたが、利用中は7件だけだった。それも「導入したサービスや機器がIPv6対応だった」「評価・検証のため」といった理由が中心。つまり、IPv6の必要性に迫られて利用しているわけではない。

 自由記入欄でも「何かが安くなる、あるいは便利になるなどのメリットがなければ利用する必然性がない」(製造業)という意見が目立った。IPv6はアドレス空間が広大なので様々な機器にグローバルアドレスを割り当てる用途も期待されるが、「企業の場合はプライベートアドレスによる運用が中心なのであまり関係ない」(別の製造業)との指摘もある。「IPv4が枯渇した実感が全く湧かない。ベンダーや通信事業者に聞いても『今は特に気にしなくて良い』との回答だった」(卸・小売業)という状況では、今回の結果にもうなずけるものがある。

 アンケートでは、「どのような状況になればIPv6の利用が進むか」についても尋ねた。これには、「IPv4の利用を一斉に廃止する」「WindowsがIPv6対応だけになる」「IPv6でなければ利用できないキラーサービスが増える」「IPv4では防げないセキュリティ上の問題が発生する」「IPv6で接続すればネットショッピングのポイントが10倍になる」などの声が寄せられた。

回答者のコメントから
 IPv6でなければ実現できないサービスがデファクトスタンダードの地位を獲得すれば利用が進むだろう。IPv6を理解した技術者が増え、企業だけでなく、社会的にも移行がスムーズに進み、実績を積み上げていくことこそが普及に向けた必要条件と言える。現在のIPv6は、誰もが使う“国際標準語”のような位置付けにはなっていない気がする。
●調査概要
調査対象:「日経コミュニケーション」読者モニター
調査方法:日経BPコンサルティングのインターネット調査システムで実施
調査日程:2013年8月21~28日
回答企業数(回収率):366 社中140 社(38.3%)