写真1●エプソン販売の中野修義取締役販売推進本部長
写真1●エプソン販売の中野修義取締役販売推進本部長
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写真2●「メールプリント for エンタープライズ」の独自機能「プル・プリント」のデモ。サーバーに蓄積した文書をタブレット/スマートフォンからの操作で印刷できる
写真2●「メールプリント for エンタープライズ」の独自機能「プル・プリント」のデモ。サーバーに蓄積した文書をタブレット/スマートフォンからの操作で印刷できる
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 セイコーエプソンとエプソン販売は2013年10月21日、プリンターに割り当てたメールアドレスに電子メールを送るだけでメール本文や添付ファイルを印刷できるサービス「メールプリント」に、法人向けの「メールプリント for エンタープライズ」を新たに追加すると発表した。法人が求める要件を付加し、自社サーバーで運用できるソフトウエア製品として有料で販売する。

 既存のメールプリント(関連記事)は、2011年8月からクラウド型サービスとして、主に個人や小規模の事務所向けに無料で展開している。エプソン販売の中野修義取締役販売推進本部長(写真1)は、「メールプリントは『パブリッククラウド』上のサービスで、一般消費者のお客様向けに機能を拡充してきた。法人のお客様からもメールプリントを利用したいという声が出ていたが、そのときに『自社のセキュリティ基準で運用したい』『自社の業務要件を反映したい』という2つの要望が強かった」と説明する。

 2つの要望に対応するため、法人向けの「メールプリント for エンタープライズ」は、クラウドではなく「オンプレミス」の社内サーバー(Windows Server)にインストールして使うソフトとして販売する。機密文書を扱う場合でも社内のセキュリティ基準に基づいてシステムを運用できる。

 また、業務要件を反映するために、社員名簿などと連携させるための「ディレクトリーサービス連携機能」(Active DirectoryとLDAPに対応)を追加した。さらに、複数のプリンターに1つのメールアドレスを割り振ったり、1台のプリンターに複数のメールアドレスを割り振ったりできる拡張機能を追加。例えば1台のプリンターに「shanai@a.co.jp」「shagai@a.co.jp」という2つのアドレスを割り振って、前者のアドレスの場合は社内向けにモノクロ・裏表で印刷し、後者の場合は社外向けにカラー・片面で印刷する、といった運用ができるようになる。

 文書をサーバーに蓄積しておき、スマートフォン/タブレットからの操作に応じて印刷できる「プル・プリント」機能も追加している(写真2)。

多店舗展開の飲食・小売業などがターゲット

 メールプリント for エンタープライズの価格(税抜き)は初期導入費が基本システムが10万円(プリンター5台まで利用可能)、「プリンター追加ライセンスパック」が5台で5万円、20台で18万円。「ディレクトリーサービス連携オプション」が15万円。導入2年目以降は標準価格の30%分の「年間ライセンス」費用がかかる。

 エプソンが新製品の主要顧客として想定するのが、「多店舗展開する飲食・小売業」「紙文書や機密文書の授受が多い文教・官公庁」「外勤営業」の3つである。いずれも、拠点や利用者が散在しているため、従来のファクスや大型複合機を使った業務フローからメールプリントへと移行した場合のコストメリットが大きいとみている。

 エプソンは、本社から39拠点の店舗や支店などにファクスで1日2回、1回あたり5枚の文書を送信する場合のコスト試算を示した。各拠点に2万円のプリンターを1台ずつ新設したうえでメールプリント for エンタープライズのライセンス料を払ったとしても、電話代の削減効果などで、5年目に約42.5%の累積コスト削減効果を見込めるという。

 正式発売は2014年2月を予定しており、3年間で1000システムの販売を目標とする。それまでの間に試用期限付きの無料体験版を配布したり、展示会に出展するなどして、顧客企業への浸透を図る考えだ。