スマートフォンやタブレットを利用するクレジット決済サービスが、日本で相次ぎ登場している。10万円近くする専用リーダーをスマホで代替でき、導入費用を一気に下げられる。訪問先など決済場所を問わない点も評価されている。売り上げを日時で集計、分析するPOS(販売時点情報管理)機能などをクラウドで提供するベンダーが増えており、機能を拡充中だ。

 クレジットカード決済の利用場面が大きく広がろうとしている。スマートフォンを活用することで、小規模の個人事業主でも導入できる決済サービスが相次ぎ登場しているからだ。

 サービス利用に必要なハードウエアは、スマホのほかはイヤホンジャックなどに外付けする小型の磁気リーダーだけである。リーダーは2000円程度で購入可能、無料で配布するサービスもある。あとはスマホに無料の専用アプリを導入することで、10万円近くするクレジット決済専用リーダーを代替できる。

米国では扱い高が1兆円超に

 使い方も簡単だ。利用客のクレジットカードをスマホやタブレットに装着した磁気リーダーに通して情報を読み込み、専用アプリ上で決済金額を打ち込む。端末を利用客に渡して金額を確認してもらい、タッチ画面上で利用客にサインしてもらう(写真左)。決済を確認するレシートは電子メールで利用客に送付できる。

写真●スマートフォンやタブレットを使うクレジット決済システムの例
写真●スマートフォンやタブレットを使うクレジット決済システムの例
外付け磁気リーダーを装着してカードの情報を読む。サインはタッチパネル画面上で受け取る。Coineyの例(左)。Bluetooth通信でレシート印刷用のプリンターや現金を収納するドロワー、バーコードリーダーなどを接続できるサービスもある。スマレジの例(右)

 基本的に決済はペーパーレスで完了する。ただしBluetoothなどでプリンターを接続して、領収書を紙で発行することも可能だ。

 スマホを使うクレジット決済サービスの先鞭を付けたのは、2009年に北米で「Square」を開始した米スクエアである。個人事業主のほか米スターバックスなどの法人、さらには個人間で物やサービスを売買する小口の決済需要も開拓し、事業開始から4年で契約件数400万、決済金額110億ドルを超えた。

 日本でも類似のサービスがこの1~2年で相次いでいる。スクエアも日本に進出して2013年5月下旬にサービスを始めるなど、サービスの選択肢が増えた。

法人も屋外や店舗で利用

 スマホ型のクレジット決済は、低コストで導入できるほか、場所を問わず決済サービスを利用できる利点がある。決済サービス「Coiney」を提供するコイニーでは店舗のほか、出張ネイルサロンなど「個人宅に訪問してサービスを提供する事業主の利用が増えている」(佐俣奈緒子社長)という。

 店舗で専用リーダーを導入している法人が、スマホ型の決済サービスを採用する例もある。屋外での物販である。楽天が提供する「楽天スマートペイ」は、グループの球団である楽天ゴールデンイーグルスやヴィッセル神戸が遠征先の球場などで採用。コンサートやイベント会場の物販で活用するユーザー企業も増えている。

 タクシーが導入しているモバイル型の専用リーダーを、スマホやタブレットで置き換える動きもある。決済機能のほかに、カーナビ機能や配車システムをタブレットに統合し、機器コストやシステム開発費用を引き下げる狙いだ。

 一方、店舗向けでも、POS(販売時点情報管理)端末やレジ端末などをタブレット中心のシステムに置き換える動きもある。プラグラムが提供する「スマレジ」は、協力ベンダーを通じてプリンターや現金を収納するドロワーを顧客に提供する。POS機能はタブレットに搭載するアプリを通じてクラウドで提供する(写真右)。

 ベンダーの訴える利点がレジ台周りの省スペース化である。ドロワーをレジ机の下に設置すれば、机上の機器は小型プリンターとタブレットだけで済む。

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