映画や演劇、不動産などの事業を手がける松竹は現在、本社とグループ14社の会計システムを統合中だ。アプリケーションやミドルウエアを複数社で共用する「シングルインスタンス」方式を採用することで、会計基準変更に迅速に対応できるようにしたり、グループ全体の経営状況を素早く把握できるようにした。
映像や演劇事業などを手掛ける松竹グループが、会計システムの統合を進めている。松竹というと東京・東銀座にある「歌舞伎座」を思い浮かべる方が多いだろうが、実は事業範囲はとても広い。
同社グループでは舞台衣装の製作・レンタルや芸能事務所、不動産管理なども手掛けており、グループ企業は20社に達する。これらグループ各社の経営情報を迅速に把握できるようにするほか、「会計業務の精度と作業効率を高める」(松竹 経理部主計課 尾崎啓成課長)ため、会計システムの刷新と統合を決めた。
既に松竹本社のほか、映画撮影の松竹撮影所、映像編集の松竹映像センター、映画館運営の松竹マルチプレックスシアターズの4社の会計システムの統合は終えた。2016年までにグループ内の連結子会社14社の会計システムを統合する計画だ。
シングルインスタンスを採用
松竹グループの新会計システムの特徴は、グループ会社が一つのアプリケーションとデータベースを共用する「シングルインスタンス」と呼ぶ方式を採用している点だ(図1)。松竹のような業種業態が異なるグループ企業の会計システムで、シングルインスタンスを採るのは珍しい。
連結決算作業の簡素化などの目的で、会計システムをグループ企業で統一するケースは珍しくない。とはいってもシステムそのものを統合せず、同一ベンダーの会計パッケージソフトやデータベースをグループ企業ごとに分けて導入するケースが多い。企業ごとに異なる例外処理や業務フローなどを作り込み易いためだ。ただし、利便性が上がるものの、システムを運用保守する手間が増える。
一方、シングルインスタンスの場合は、グループ各社の融通が利きにくいというデメリットはあるものの、運用保守の手間やシステムの導入コストを抑えられる。松竹グループでは、会計基準変更時の作業負荷の低減と精度向上が優先課題だったため、シングルインスタンスで会計システムを統合することにした。
新会計システムのソフトは、みずほ情報総研の会計ソフト「Account Cube ビジネステンプレート」を採用。システム基盤は、TISのプライベートクラウドサービスを利用している。