「いらっしゃいませ」。来客があると、入り口で太鼓を鳴らして出迎える。中に入ると、1万坪の日本庭園が広がる──。都心から1時間で行ける鶴巻温泉の旅館「元湯陣屋」の光景だ。

 陣屋は創業1918年(大正7年)の老舗旅館。表向き、ITとは縁遠いように思える。しかし、れっきとした社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の先進ユーザーだ。

 チェックアウト後の客室を点検していた客室係が、雨漏りを発見したことがあった。客室係はすぐにタブレットを取り出し、角度を変えて何枚か雨漏りの箇所の写真を撮影。「雨漏りの修理を至急お願いします」というコメントを添えて、SNSに書き込んだ。

 書き込みを見たフロント係はすぐ修理を手配、同時に部屋の予約受付を停止した。こうした対応を素早く実行して、雨漏りした部屋が予約されることを防いだ。

 20の客室に加えて六つの宴会場・結婚式場を持つ陣屋では、従業員同士が頻繁にこのような形でやり取りしている。その中心にあるのがSNSだ。

 同社は2012年から、アルバイトを含む約80人がスマートフォンやタブレットを持ち、SNSを使って日常業務を進めている(図1)。担当者の割り振りといった日常業務に関する情報を共有するほか、サービスを提供する際の気づきや改善提案などを議論する。

図1●鶴巻温泉の旅館「元湯陣屋」のSNSによるコミュニケーション
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 「今や我々の仕事には欠かせない。75歳の従業員も利用している」。陣屋の宮崎富夫社長はSNSについて、こう話す。

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