ユーザー企業の情報システム部門で今、運用担当者の人数が大きく減り始めていることをご存じだろうか。
運用業務には、「アプリケーション保守」や「OS/ミドルウエア運用」、「ITインフラ運用」などがあるが、あらゆる業務に関わる運用担当者が減少しているのだ。まずは4社の事例を紹介しよう。
サイバーエージェント
運用担当者の人数 20人 → 0人(予定)
サイバーエージェントで消費者向けWebサービスを手がけるアメーバ事業本部では、現時点で20人いるOS/ミドルウエアの運用担当者を、2年後の2015年までにゼロにする計画だ。
彼らは現在、OS/ミドルウエアをサーバーにインストールしたり、パッチを適用したり、アプリケーションの負荷に応じてサーバー台数を増減したりする業務を行っている。これらの業務を、オープンソースソフトウエアの運用管理ツール「Chef」を導入することで、自動化する計画だ(図1)。
Chefは、OSやミドルウエアの設定を「レシピ」と呼ぶRubyのプログラムとして記述し、各ソフトに適用するというツールだ。従来、OS/ミドルウエアの設定作業の内容は手順書に記述し、運用担当者は手順書に従って人手で運用管理ツールを操作していた。「Chefでは手順書の代わりにRubyのプログラムを記述し、プログラムがOSやミドルウエアの設定を人に代わって行う」。サイバーエージェント アメーバ事業本部ピグディビジョンの並河祐貴氏はこう語る。
並河氏は現在、自分が行ってきた運用の手順を、Chefのレシピに落とし込む作業を進めている。同社では今後、並河氏が作成したChefのレシピを使うだけで、運用担当者ではなく開発者がOS/ミドルウエアの設定を行えるようになる。レシピが整備できれば、「これまで運用担当者がやってきた、OSやミドルウエアの設定という業務は不要になる」(並河氏)。
東急ハンズ
運用担当者の人数 11人 → 3人
東急ハンズは、アプリケーション保守の担当者を大幅に減らした。2009年10月時点で11人いた運用担当者が、現在は3人にまで減った(図2)。
同社は2009年まで、システムの開発をベンダーに外注していた。そのため運用担当者が行っていたアプリケーション保守の仕事は、「利用部門からの要望を、ベンダーに要件として伝えることだった」(東急ハンズ ITコマース部長の長谷川秀樹執行役員)。
東急ハンズで運用担当者が激減したのは、2009年から自前開発に舵を切ったからだ。プログラムのコーディングも自前で行う。自前開発によって、利用部門からの要望に情報システム部門だけで応えられるようになった。そして「要件をベンダーに伝える」だけの担当者はいなくなった。
自前開発の手法として、アプリケーションのロジックをUNIXのシェルスクリプトとして記述する「ユニケージ開発手法」を採用。情報システム部員にユニケージを学習させて、自前でコーディングできるようにした。
自前開発は、まず会員向けポイントシステムなど、パッケージソフトを使った販売管理システムの周辺システムに適用した。その後、原価計算を行う勘定系システムなどにも適用範囲を広げ、2012年には販売管理システムのパッケージを自前開発で置き換えた。