ITインフラのコスト削減で最も効果を期待できるのは、サーバーの統廃合である。これにクラウドサービスを組み合わせることでさらなる削減を狙う企業が増えている。クラウドへの移行を契機に不要なサーバーを廃棄。移行するサーバーもOSやミドルウエア、場合によってはアプリもできるだけ共有化することでライセンス費用や保守費用、運用管理の負荷を減らすわけだ。

全面移行で年間コスト3割削減も

 当たり前だが、コスト削減効果は規模が大きくなるほど高くなる。HOYAは2011年5月、クラウドへの全面移行を決めた(図2)。これまで14の事業部が個別にシステムを構築・運用していたが、移行を契機に統合・整備していく。CAD関連や制御系のサーバーは残すが、それ以外は原則として2016年までにNTTコミュニケーションズ(NTTコム)のクラウドサービスに移す。サーバーの約25%は廃棄する。ERPパッケージも全社で統一し、導入方法や運用、ドキュメント作成ルールなどを合わせて合理化を図る。WANも海外を含め、NTTコムのサービスに集約。2016年までに年間ITコスト30%以上の削減を目指す。

図2●HOYAはクラウドへの全面移行で2016年までに年間ITコスト30%以上の削減を目指す
2011年1月に全社のIT整備プロジェクトを始め、同年5月にはクラウドへの全面移行を決めた。現在も移行作業を進めている。サーバーとネットワークのインフラをNTTコミュニケーションズのサービスに戦略的に集約。密なコミュニケーションと手厚いサポートを期待するほか、優位な料金を引き出す狙いがある。
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 TOTOもクラウドへの全面移行を決めた一社。設計や制御・設備用のサーバーは残るが、ファイルサーバーをはじめ、販売や物流、生産管理システムなど全体の80%以上を2018年までに移行する計画だ(図3)。10%弱は廃棄する。メインフレームやオフコンは日本IBMのデータセンターに移行済みで、生産管理システムは海外を含めてSAP ERP 6.0に統一。独自システムを構築する場合は原則として他事業部との併用を前提とする。

図3●TOTOは2018年までに情報システムの80%以上をクラウド側に移行
メインフレームとオフコンを除き、サーバーのインフラはNTTコミュニケーションズのサービスに戦略的に集約した。第1段階の移行計画では、約16億円のコスト抑制を見込む。
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 同社の場合、サーバーを自社で所有し続けた場合にリース切れによる入れ替えで生じる費用を、クラウドへ移行することでどの程度抑制できるかというアプローチで取り組んでいる。「リース切れでサーバーを入れ替える際は一時的に2重で所有することになり、検証などのコストも生じる。クラウドへの移行で無駄な入れ替えをなくしていく」(情報企画部の角田誠一企画主幹)。現時点で把握できている分だけで、今後6年間で約16億円のコスト抑制を実現できる見込みだ。

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