この連載では、市場で話題の製品・サービスとその主要ベンダーを取り上げて、「ユーザー企業は、ベンダーとチャネルをどう見極めるべきか?」という観点から解説している。

 帳票とBIは業務系システム手掛ける場合に密接に関係するアプリケーションである。この帳票による入力とアウトプット、そして入力されたデータの分析ツールとしてのBIが注目を集めている。その背景には、定型化されたバックオフィス業務が成熟し、伝票発行などのいわゆるルーチン化した業務システムから、企業戦略的なIT活用の時代にようやく入りつつある状況がある。

 いまさらの感はあるが、今回は業務システムのコアである帳票とBIという二つのパッケージ製品で高い実績をあげているウイングアークを取り上げたい。

ウイングアークはなぜ、トップシェアにこだわったのか?

 ウイングアークの起源は、翼システムという自動車業界向けのパッケージソフト販売会社にある。翼システムで情報企画事業部の事業部長だった内野弘幸氏(現在のウイングアーク代表取締役社長)が2004年、同事業部を分社・独立して設立した。独立時の社名はウイングアーク テクノロジーズで、2012年に現在の社名であるウイングアークとなった。

 同社の掲げたミッションは、帳票システムでシェア1位を取ることだった。2位、3位でもいいと考えているようではトップには決してなれない。そこには「ソフトウエアは、トップシェアを取らなければ意味はない」という強い意識があった。

 なぜそう思うかについての理由は明快だ。それを説明するために、内野氏が帳票パッケージソフトを開発しようと考えた経緯を見ることにしよう。

 1990年代当時の帳票システムのほとんどは、企業ごとにプログラムを組んで開発されており費用も高額になっていた。もともと内野氏はコンピュータ業界の将来性にあこがれて、これからのビジネスに役立つシステムを開発したいと考えていた。だが、実際に働いて感じたことは、高価なコンピュータシステムの割に実現できていることの多くが限定的だったことだ。

 特にコンピュータと人の橋渡し役である帳票には、細かいこだわりを持つ顧客が多かった。だが、顧客の要望通りに手作りした帳票システム構築は、その満足度と引き換えに高額であり、細かな変更にも高い費用が生ずるなどの問題があった。

 こうして、内野氏はIT業界において多くの企業の役に立つシステム製品を作り上げたいという自らの思いと、同時にこの分野で成功を収めたい、即ちシェア1位を狙いたいという思いにたどり着いた。

 圧倒的なシェアを取ることの重要性はいくつかある。まず製品の安定性、信頼性を保つためだ。そのための開発や手直しに掛ける手間やコストも、一定のシェアがあれば採算に合わせることができる。

 シェア1位を取るために同社が行った戦略は2つだ。1つはブランディング戦略。フェアやセミナー、広告・宣伝様々な場面でブランディングを高める活動を展開した。良い製品であれば売れるという考えではなく、まずは製品の認知を広げることが重要であることを徹底した。同時にそれまで直販で行っていた販売戦略を、全国展開、そしてより小規模な企業にまで対象ユーザーを拡大することを目指して、直販からチャネル販売に切り替えた。

 この2つの施策を中核に、同社の帳票パッケージのシェアナンバーワン獲得戦略が進められた。

表●1stホールディングスの最近の業績推移(単位:千円)
※売上の大半はSVF(帳票)関連であるが、Dr.Sum EA(BI)も着実に伸びている。
  平成23年2月期 平成24年2月期 平成25年2月期
 ソフトウエアプロダクト売上 4,700,107  5,470,603  5,651,245 
 (内 帳票製品) 3,696,100  4,239,467  4,351,224 
 (内 BI製品) 1,004,007  1,231,135  1,300,021 
 保守売上 3,841,838  4,357,895  4,909,417 
 その他 291,581  2,161,948  2,307,398 
 合計 8,833,526  11,990,447  12,868,062 

全国4カ所の事業所
【本社】〒150-0031東京都渋谷区桜丘町20-1 渋谷インフォスタワー14F
【大阪オフィス】〒530-0001 大阪府大阪市北区梅田1-8-17
【名古屋オフィス】〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦2-3-4
【福岡オフィス】〒812-0011 福岡県福岡市博多区博多駅前1-15-20

社員数 187名(2013年2月28日現在)
売上高 109億円(2013年2月期)

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