NAS(Network Attached Storage)をオンラインストレージとして利用するためのソフトウエア製品が相次ぎ登場する。ユーザー企業はファイアウォール内にデータを蓄積しつつ、社外のスマートフォンやタブレットといったさまざまな端末からNAS上のファイルにアクセスできる。

 社内にいるか社外にいるかに関係なく、同じファイルにアクセスしたい。こうしたニーズから、「Dropbox」「Google Drive」「SkyDrive」「SugarSync」といったパブリックのオンラインストレージを、個人で契約し仕事に使うユーザーが増えている。

 パブリックのオンラインストレージを使えば、クラウドを通じて、会社のPC、自宅のPC、スマートフォンなど複数の端末間において、ファイルの同期を取ることができる。さらに、1人が所有する複数の端末間でのファイル同期だけでなく、複数のユーザーでファイルを共有することも可能だ。同一部門に所属する社員の間で互いにファイルを公開すれば、部門のファイルサーバーのように使うこともできる。

 しかし、社員が個人でパブリックのオンラインストレージを使うことは、「企業システムの運用担当者にとって悩みのタネになっている」(EMCジャパン インフォメーションインテリジェンス事業本部 アカウント・マネージャー 塚田 哲氏)。機密情報が含まれたファイルをオンラインストレージにアップロードしてしまうなど、情報漏洩リスクが高まるからだ。

 パブリックのオンラインストレージの利用を禁止しても、いたちごっこになるばかり。ユーザーニーズに応えるには、セキュリティを保ちつつ社外からも同じファイルにアクセスできるようにする必要がある。

国内で製品が相次ぎ登場

 この問題の解決策となるのが、NAS(Network Attached Storage)をオンラインストレージ化するソフトウエア製品だ。米EMCの「Syncplicity」や米Citrix Systemsの「ShareFile StorageZones」などがある。前者は早ければ2013年5月に、後者は2013年下半期に、国内での販売が始まる予定だ。

 これらの製品を使うと、「ファイアウォールの内側に設置されたNASに、オンラインストレージの機能を付加できる」(シトリックス・システムズ・ジャパン マーケティング本部 プロダクトマーケティング シニアマネージャー 竹内裕治氏)。実際には社外からインターネット経由でNAS上のファイルすべてにアクセスできるのではなく、NAS内に専用の共有フォルダーを設け、それを介して複数の端末の間で、時間差はあるもののファイルの同期を取る仕組みだ。端末については、PCだけでなく、スマートフォンやタブレット端末にも対応している(図1)。

図1●NASをオンラインストレージ化するメリット
図1●NASをオンラインストレージ化するメリット
NASをオンラインストレージ化することで、ファイアウォール内のファイルがインターネット経由でアクセ ス可能になる

 どちらの製品も、大まかなシステム構成は共通している。ここでは、EMCのSyncplicityを例に説明しよう。

 NAS以外の主な構成要素は、「管理サービス」「送受信サーバー」「専用クライアントソフト」の三つである(図2)。

図2●オンラインストレージ化と同期の仕組み(米EMC「Syncplicity」の例)
社内ネットワーク上のNASに対して、送受信サーバー、クラウド上の管理サービス、専用クライアントソフトを組み合わせて使う
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 管理サービスは、EMCがクラウドサービスとして提供するもの。このサービスによって、運用担当者がユーザー、グループ、アクセス権限の認証情報などを管理する。

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