2013年1月、パナソニックがビッグデータの本格活用に向け、静かにのろしを上げた。

 同社のシステム部門に当たるコーポレート情報システム社の社員2人を渡米させ、ニューヨークの大学の専門コースでデータサイエンティストとして育成。帰国後はデータ活用の中核を担わせる。

 「留学は2012年末に決めて即実行した。2人を社内初のデータサイエンティストに育て、これを足がかりに、2015年には50人に増やしたい」。コーポレート情報システム社CITA推進センターの松本昌之所長はこう意気込む。

 パナソニックは2012年夏、「スマート家電」に舵を切り始めたのを機に、全社を挙げたビッグデータ活用の体制作りに着手した(図1)。

図1●パナソニックが全社を挙げて進めるビッグデータ活用の概要
社内外の情報を集約し、マーケティングや製品開発、顧客サポートなどに活用していく
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 スマート家電は、減少を続ける特約店「パナソニックショップ」に代わり、顧客の情報を直接把握できる新たなチャネルとして同社が大きな期待をかけている。スマートフォンとインターネット経由で収集した利用状況のデータを、会員サービスの顧客情報と照らし合わせることで、年代や性別、地域などにより異なる顧客一人ひとりの使い方を見極めることができるからだ。「ビッグデータから新たなニーズを見いだし、ビジネスの企画や開発に役立てたい」(松本所長)。

 今後はスマート家電からのデータに加え、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での製品や競合に関する投稿、市場調査会社の販売実績や統計情報、法人向け太陽光発電システムや大型バッテリーの稼働状況などのデータも分析対象に加えていく。

 そうしたビッグデータ活用の全社展開に向け、同社がまず手がけた「初動」の一手が、システム部門主導によるデータサイエンティストの育成だった。米国留学を果たした2人は、まさにその先兵の役割を果たす。

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