ERP(統合基幹業務システム)はユーザー企業にとって最も重要なIT活用分野の一つであり、基幹系業務システムを含めると、その歴史は長い。にも関わらず、「自社の業務と合致しない」「予定よりもコストが多くかかってしまった」といったユーザー企業の悩みはなかなか解消されないのが現実だ。それを解決するために業種や業態はもちろん、個々のユーザー企業の実態も踏まえた「フィットギャップ分析」など様々な取り組みがなされている。
今回はそうしたERP活用を成功させるTIPSの一つとして、ユーザー企業を対象とした調査データから垣間見えるポイントをご紹介する。それを数式風に表現すると、「取り組み率×達成度÷実施手段=優先度」となる。以下では「生産管理システム」を例にとって、この数式が意味する内容を詳しく見ていこう。
まずはニーズの細分化が必要
「取り組み率×達成度÷実施手段=優先度」の右辺に書いた「優先度」とは、ユーザー企業がERPに関して抱えるニーズのうちで、「どれを優先して取り組むか?」を判断するためのバロメータを表す。そして、この優先度を判断するための要素が、左辺の「取り組み率」「達成度」「実施手段」である。これら3つの要素から、どのニーズを優先的に満たすべきかを判断していくわけだ。
従来、ERPのニーズを分析する際には「生産管理システムでは原価管理が重要」「販売管理システムでは売上管理が不可欠」といったように「×△○管理」という粒度でニーズを測ってきた。しかし、実際に生産管理の現場におられる方であればご存知のように、同じ「原価管理」でも実現したい「目的」や解決したい「課題」は実に様々だ。つまりユーザー企業が抱えるニーズは「×△○管理」より、さらに細分化して捉える必要がある。
図1は年商5億円以上~500億円未満のERP導入済みユーザー企業に対し、生産管理において実現したい「目的」や解決したい「課題」を尋ねた結果である。調査では「細分化ニーズ」を捉えるために、多数の選択肢を設けた。図1では、その選択肢の中で比較的多く挙げられたものに絞ってプロットしている。
見れば分かるように「原価管理」に関連する選択肢だけでも10近くあり、それぞれの回答の割合にも大きな差がある。この「細分化ニーズ」を把握することが、ユーザー企業にとってもERPを提案・販売する販社/SIerにとっても、ERP活用の第一歩となる。これが「取り組み率×達成度÷実施手段=優先度」の左辺の一つ、「取り組み率」である。