アウトソーシングを取り巻く環境が、大きく変化している。今こそ、日本の制約を踏まえながら、欧米型アウトソーシングとは異なる「ニッポン型アウトソーシング」に向けた第1歩を踏み出すべきときだ。その理想型はまだ見えないものの、新しいアウトソーシングの姿を方向付けるいくつかのトレンドは明らかになってきている。
クラウドがインソーシングの機会を提供
その一つが、クラウド・サービスの成熟である。
アウトソーシングの視点で言えば、2~3年前までは、クラウド・サービスの最大のメリットはコスト削減だった。しかしクラウド・サービスが成熟した今、アウトソーシングの視点から見たクラウド・サービスの最も大きなメリットは、様々なソーシングのオプションをIT部門に付与してくれることである。
例えば、クラウド・サービスの成熟とともに、プロバイダーの選択肢は大きく広がった(図)。
さらに、クラウド・サービスはインソーシング(アウトソーシングしていた業務を社内に戻すこと)の機会も提供してくれる。IaaS(Infrastructure as a Service)型のパブリッククラウドを利用することで、開発/テスト用の環境が素早く調達できるからだ。例えば、あるユーザー企業ではシステムのテスト用にサーバー300台を3日間だけ立ち上げたが、料金はたった3万5000円で済んだ。
インソーシングは、特にSNSやモバイルなどBtoC型のサービスを提供している企業で関心が高い。BtoC型サービスでは、新しいサービスを素早く開始する必要がある。アウトソーシングするよりも、社内でシステムを開発したほうがこのスピード感を実現しやすい。社内に技術者の数が足りないといった課題もあるが、今後しばらくは多くの企業でインソーシングのチャレンジが続くだろう。