ディザスタリカバリー(DR)対策の必要性は理解しているが、とても投資できる金額ではない。検討後の“実行”に二の足を踏んでいたユーザー企業が、DR対策の現実解を見つけ出した。インフラ効率化の一環として対策を進める「合わせ技」や、クラウドなどリソースの「共有化」を進めることで、DR対策のハードルは下げられる。

 東日本大震災から2年──多くの企業が「ディザスタリカバリー(DR)」の見直しに走ったが、検討だけで終わった例は少なくない。日本ヒューレット・パッカード(HP)の挾間崇 ストレージソリューション部長は、「リスク評価やインパクト分析で対策費用を算出するが、そんなに投資できないと断念する。これがDRの典型的な失敗アプローチ」と指摘する。

 DR対策のハードルは、万が一のために投じる費用の高さに尽きる。「本番サイトのコストを100とすると、DRサイトでさらに100が必要。ネットワーク費用などを50とすると、コストは2.5倍に膨らむ」(NTTデータ 企画営業統括部の松林央氏)。ITRは「IT投資動向調査」で災害対策コストの割合を調べた。売上高5000億円以上の企業で、本番サイトの10%以上のコストをかけるのは、2011年度統計で3割に過ぎない。

 対策の必要性とコストの板ばさみの間で、現実解を見つける企業が増えている。各社は、DR対策を後付けする費用負担が大きいことから、システム改善などとの「合わせ技」シナリオ作り、プロジェクトを進めている。DRの仕組みづくりでは、リソースの「共有化」で、費用を抑制している。HPの挾間部長は「既存システムをシェイプアップし、浮いたお金で対策するのがDRの成功アプローチ」と話す。ユーザー企業の取り組み、ベンダーのサービスを見よう。

性能改善とDRを抱き合わせ

 プラスチックフィルムの製造販売を手掛ける朋和産業は、データベース(DB)の性能改善と一緒にDR対策を進めている。2013年末の対策完了を目指し、「Oracle Database Standard Edition(SE)」を「同 Enterprise Edition(EE)」にアップグレードし、札幌にDRサイトを作った(図1)。

図1●札幌にDRサイトを構築した朋和産業
データベースの処理性能向上案件に、DRサイト構築も盛り込んだ
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 情報システム部の野上博司 課長は「DRのためだけにシステムを作るのは辛いと考え、性能改善と抱き合わせたストーリーを作った」。導入費用を3500万円程度に抑えることができたというアプライアンス製品「Oracle Database Appliance(ODA)」への投資対効果には、パーティショニング機能などによるDBの性能改善に加え、「Oracle DataGuard」によるDRサイト構築が含まれる。

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