ブレンド調味料大手の日本食研ホールディングスは、現場社員の意見交換などを活性化するために社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用している。2013年3月にはグループ全社員3400人に導入を終える。売り方の工夫などのイノベーションを促すことが狙いだ。早くも、定番商品の成功事例を現場で共有してヒット商品を生む成果が出た。

 「北関東のスーパーマーケットで、焼き込みチーズソースを利用した野菜の惣菜が好評です」――。社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)へのたった一件の投稿が、発売から10年以上たっている定番商品をわずか3カ月でヒット商品に押し上げた。投稿があった翌月の売り上げは前年同期比120%、翌々月以降は同150~200%で推移している。

 その定番商品とは、複数のチーズをブレンドしたガーリック味のソース「焼き込みチーズソース」。野菜やパンにかけてオーブンで焼くといった使い方をする。日本食研ホールディングスの事業会社、日本食研や日本食研製造が主にスーパーやレストラン向けに製造・販売している商品だ。

 ヒットの発端は、2012年7月に北関東の営業担当者が社内SNSに書き込んだ写真付きのコメントだった。投稿を見た他の営業担当者から「参考にします」「私もこんな使い方を提案しています」といった投稿が3カ月間で約30件あった。

 さらにこのやり取りを見た他の営業担当者の間で、焼き込みチーズソースを扱った商談数が増加。売り上げが右肩上がりに増えていった(図1)。

図1●日本食研による社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用例
図1●日本食研による社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用例
投稿が相次いだことで「焼き込みチーズソース」が定番商品からヒット商品に変わった

私生活と同じ環境を整える

 電子掲示板などの導入をテコに社内のコミュニケーションを活性化して、社員同士の情報共有を進めようとする事例は珍しくない。ただし、かけ声倒れで終わるケースも少なくないのが実情だ。

 日本食研ホールディングスでは経営トップ自らが推進者となりつつも、社員の自主性を重んじてコミュニケーションの活性化に取り組んでいる。「現場の社員同士が自由に意見を交換することが、売り上げ拡大に貢献するイノベーションを生む。社員が自分の好きな方法で情報を取得したり、発信したりできるように、様々なツールを用意していく」と大沢哲也代表取締役社長は話す。

 この言葉通り日本食研では、オフィスに様々な仕掛けを施している(図2)。基本的なコンセプトは「社外と同じ環境を社内に再現する」(大沢社長)ことだ。「会社を離れれば、私生活ではテレビを見ることでニュースを知ったり、WebサイトやSNSで情報を収集したりしている。おいしいレストランを探して訪問し、その感想をSNSで誰かに伝えようと書き込むこともある。同じように行動できる環境を社内に用意することで、社員が楽しみながら会社に貢献する情報を交換する環境が整う」と大沢社長は話す。

図2●日本食研が用意している社内コミュニケーションのツール
社員が様々な手段で情報を取得し、発信できるように環境を整備している
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 実は数年前まで日本食研は「トップダウン型のコミュニケーションスタイルだった」(大沢社長)。ITの面でも、イントラネットに社長ブログを作ったり、営業の成功事例を共有する「営業ニュース」を月1回掲載したりと、一方向の情報発信が主だった。「様々なツールを用意する」方針の下、これらは今もあえて続けている。

 だが2009年10月に就任した大沢社長は危機感を抱いた。「市場の変化が激しい今の時代、トップダウン型の情報発信だけでは、新しいアイデアが生まれず、成長は難しい」。そしてコミュニケーションを活性化する手段として、「社外と同じ環境を社内に再現する」というコンセプトに行き着いたのだ。

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