日本ヒューレット・パッカード(HP)が、大規模な分散処理に向けた低電力のサーバー「Moonshot」を2013年4月に発売した。インテルの低電力プロセッサ「Atom S1260」を数百~数千個と大量に並べることで、大規模分散処理に必要な性能を低コストで実現した。Xeonなどを搭載した一般的なサーバーと比べて最大で電力を89%、設置スペースを80%、導入コストを77%削減できるという。
用途はビッグデータの処理やM2Mでのセンサーデータの処理、Webサーバーの負荷分散、データベースのキャッシュサーバー、製造業での数値解析などである。Xeonなど一般的なサーバープロセッサと比べてAtomはプロセッサ1個当たりの性能は劣るが、大量に並べることで全体の処理性能を引き上げた。
新設計のサーバーは設置密度が高いので、一般的な42Uの高さの1ラック内に最大で405台(810個のプロセッサコア)を搭載可能だ(図)。価格は45台のサーバーを内蔵したタイプで1222万2000円からである。製品の拡販に向けて日本HPは、40名の専任営業を設けた。
Moonshotは、抜き差し可能なカートリッジ型の構造を採用した。高さ4.3Uのシャーシに最大45個のカートリッジを内蔵できる。一つのカートリッジは独立した1台のサーバーやストレージに相当する。これらを差し替えることで、導入後にプロセッサのメーカーを変更したり、ストレージ容量を拡張したりできる。
モジュール型のサーバーを抜き差しできる点はブレード型サーバーと同様だが、「Moonshotではカートリッジの種類がより豊富な点が異なる」(HP)という。4月の発売時点ではAtomを1個搭載したもののみだが、2013年後半から拡充する。4個のAtomプロセッサを搭載したタイプや、スマホなどで採用され電力効率に優れたARMプロセッサを搭載したタイプ、FPGAやDSPなど特定の技術計算向けのアクセラレーターを搭載したタイプなどを投入する。
2014年には64ビット版のARMプロセッサが登場予定で、これを搭載したタイプも加わる見込みだ。