この連載では、市場で話題の製品・サービスとその主要ベンダーを取り上げて、「ユーザー企業は、ベンダーとチャネルをどう見極めるべきか?」という観点から解説している。

 今回取り上げるVMware社(以下、ヴイエムウェア)はハイパーバイザーなどの仮想化技術の製品において、グローバルはもちろん日本でも圧倒的なシェアを誇っている。今回はそんなヴイエムウェアの強さを分析する。

ITコストの維持管理費へのシフトで注目される

 今では違和感なくITシステムの重要な要素技術になっている仮想化だが、実は表舞台に登場してから数年しか経過していない。正確にいえば仮想化的な技術は、それこそメインフレームの時代から存在していたが、いわゆるパッケージ的なカテゴリで市民権を得たのは実質的に2008年あたりからと言えるだろう。市場に最もPCサーバーが出荷された時期と、ほぼシンクロしている。

 企業において、新規導入しなければならないITインフラは、実はあまり残されていない。サーバーを含めてほとんどのITインフラは導入済みであり、検討の焦点はこれらITインフラをいかに効率良く活用するかに移っている。別の言い方をすれば、ITのコストは「CAPEX(=Capital Expenditure)」、すなわち設備投資よりも「OPEX(=Operating Expense)」、つまり維持管理費や運営費にシフトしつつある。これが仮想化が注目された背景である。

専業ベンダーのヴイエムウェアが日本の市場を立ち上げた

 日本法人であるヴイエムウェア株式会社の設立は、わずか10年前の2003年である。日本でのビジネス展開は、ネットワールド社が先行してVMware製品を扱い始めた2001年からとなる。

 参入当初は、“仮想マシン”という言葉が通用しない時代であった。国内での認知が低かったために、アメリカでのサクセスストーリー、導入事例などを見せながら、積極的に仮想化をアピールした。だが思うようには普及せず、競合企業もほとんどなく、孤軍奮闘状態であった。

 その後、2004年あたりからx86サーバー市場の急拡大をきっかけに、仮想化によるコスト削減効果が注目を集めるようになった。しかし、5年前の2008年ころまでは、セミナーの内容は「仮想化とは」の入門レベルであり、“知る人は知る”レベルのソリューションにとどまっていた。当時は、サーバーメーカーも、仮想化によるサーバー販売台数減少を嫌がり、積極的ではなかったようだ。

 仮想化が一挙に脚光を浴びるようになったのは、実はここ3年ほどのことだ。

 2009年ころからは、サーバーベンダーも仮想化対応の標準機を市場に投入するようになり、市場が一気に伸びた。ヴイエムウェアだけではなかなか認知は進まなかったが、マイクロソフトがHyper-Vで仮想化に参入したことで、認知度は一気に向上した。

 ヴイエムウェアは競合商品について、認知度の向上には貢献したものの「技術面では市場の評価が低いために、高い実績を持ち、安心して利用できるVMware製品をユーザーが選択した」と見ている。特に、レガシーシステムを延命させるというニーズで、VMware製品は高く評価されたという(図1)。

図1●VMware 製品の概要
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 このほか、運用管理、災害対策などでも仮想化の応用は広がりを見せている。仮想化による運用コストの削減は特にユーザー企業での受けが良く、「仮想化の提案は社内の稟議が不要」と企業のシステム担当者に言われることも多いという。BI(ビジネスインテリジェンス)やCRM(カスタマリレーションマネジメント)と違って、導入効果が分かりやすいことが、その理由である。

 ヴイエムウェアの仮想化製品が持つ高い機能スペックを必要とするユーザーは多い。ユーザーの仮想化ソフトの決定要因は、コスト削減、可用性、冗長性の3つである。コスト削減に限ると、競合製品との違いがあまり見えないことが多い。だが、可用性、冗長性についての評価の高さが、ヴイエムウェアに有利に働いている。

 加えて、ヴイエムウェアがユーザーに評価される理由のひとつに、ユーザーへのサービスとして「テックDAY」を提供していることが挙げられる。このサービスは、ヴイエムウェアを導入したユーザーに、ワンデートレーニングを行い、ヴイエムウェアの理解を深めてもらい、利用度を向上させてもらうものである。後述するユーザー会からも評価は高い。

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