ユーザー企業自らが高いスキルの要員を抱え、システムをじっくり開発する。こんな内製のイメージが変わりつつある。もっと手軽に実行できる「軽い」内製に乗り出す企業が増えているのだ。クラウドやアジャイルなど新たな技術や手法が後押ししている。5社・組織の事例から実態を探る。

 4人のチームで業務システムを素早く構築する。アプリケーション自動生成ツールを利用して、こんな開発体制を整備したのは、画像/映像製作のアマナホールディングスだ。すでに電子申請システム、稟議システムなどを開発。2013年4月に販売管理システムと連携したマスターデータ管理システムを稼働する予定だ。

 住友電気工業は、動作可能なソフトを少人数・超短期で作り上げるアジャイル開発手法を本格的に採用した。情報システム部門で使うシステムで効果を検証し、2012年後半から業務システムへ本格的に適用を始めた。

 地域住民のためのアプリケーションを地域住民が自ら作って提供する。こんな取り組みを進めているのは福井県鯖江市だ。2012年11月には、コミュニティーバスの運行状況を地図上で確認できるWebアプリケーションをボランティアが開発、自らのサイトで誰でも利用できるようにした。

誰でも内製できる時代に

 アマナ、住友電工、鯖江市の取り組みはまさに三者三様。共通するのは、一切ITベンダーに頼らない内製であることだ(図1)。しかも従来の内製とは違う。

図1●システム内製の変化
図1●システム内製の変化
ITツールや開発手法の進化が、「軽い」内製を後押ししている

 高い開発スキルを備える要員をユーザー企業が自ら抱え、業務システムをゼロから時間をかけて開発する。従来は内製というと、こうした「重い」形が主流だった。問題は体制整備のハードルが高く、システムを内製したくてもできないケースが多かったことだ。

 しかし、ここに来てツールや開発手法、クラウドなどインフラの進化で、内製のハードルがぐっと低くなった。従来なら重い内製が不可欠だったアプリケーションも、今では軽く作れる。「やる気とリーダーシップさえあれば、誰でもシステムを内製できる時代になった」(大成建設の元CIO(最高情報責任者)で、ITコンサルティングを手掛けるオランの木内里美社長)のである。

 いま情報システム部門に求められるのは、ビジネスを直に支えるITの実現。変化に即応できるシステムの実現に、内製化は避けて通れない。まさに「軽い」内製はこうしたニーズに合致する。五つの事例から実態を見ていく。

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