権威がある人や声が大きい人が、他の人の意見をあまり聞かずに、組織の意思決定を支配する---。日本の企業ではよくあるケースだ。しかし、正しい意思決定のためには、社員のアイデアや知見をなるべく多く集めた方がいい。アイデアや知見の量と質は、意思決定にとって非常に重要だ。
そこで、最近注目されているのが、社内SNS(ソーシャルネットワークシステム)の活用である。社内SNSを利用することで、社員がアイデアや知見を出しやすくなるほか、お互いに評価し合うことで、アイデアや知見が洗練され、質が高まる。
これまで、社内SNSは議論の活性化や透明化のために導入されることが多かったが、必ずしも成功しているとは言えない。実際、「効果が実感できない」「ROIが測れない」という声は多い。しかし、社内SNSを「意思決定のための道具」「経営のためのツール」と位置付ければ、経営者の理解も得やすい。社内SNSの活用---これが、正しい意思決定のために、今やるべきことだ。
スモールサクセスを積み重ねる
「社内SNSを意思決定に活用せよ」と言うと、「かつてのナレッジマネジメントと何が違うのか」と思う人がいるかもしれない。確かに、コンセプトは似ているが、両者のアプローチは異なる。
ナレッジマネジメントは失敗し、定着しなかった。理由は簡単だ。ナレッジマネジメントでは、ボランティアで自らのナレッジを公開することが前提になっていたからだ。ナレッジの提供者に対して報いる仕組みもなかった。これでは情報は集まらない。「放っておいたら社員は何もやらない」のである。
一方、社内SNSは、「いいね」ボタンのように、意思表示やフィードバックのための簡単な仕組みがあるので、ナレッジマネジメントと比べて、社員が情報を提供しやすい。
また、ナレッジマネジメントのような「大きな箱」ではなく、いくつもの「小さな箱」=コミュニティを作れるのも、SNSの特徴だ。コミュニティごとに、「小さな目的」を設定して、スモールサクセスを積み重ねる。これは、社内SNSを定着させるための、重要なポイントである。
社内SNSを定着させるためには、重要なポイントがもう一つある。それは、SNSの活動をきちんと人事考課に組み込むということだ。
ソーシャルな活動を人事考課に組み込めるSNSも登場している。米Salesforce.comの人材パフォーマンス管理ツール「Salesforce Work.com」(元々は、Salesforce.comが買収した米Rypplの製品)がそれだ。社内SNSの中で、目標設定、フィードバック、評価を行える。評価プロセスそのものを「見える化」しているため、自分の評価に対して社員が納得しやすい。