IT部門を取り巻く環境が変わりつつある。まず、テクノロジーが変わってきた。その一つの例が、コンシューマライゼーションだ。現在のエンタープライズITは、モバイルやビッグデータ、クラウドといったコンシューマー技術を無視できなくなっている。
テクノロジーが「次のステージ」に入った
システムのアーキテクチャーも、根本的に変わりつつある。ITの歴史を見ると、まずメインフレーム時代があり、それがクライアント/サーバーに変わった。クライアント/サーバーは、サーバーとPCで成り立っている。
しかし現在では、PCがモバイルやセンサーに、サーバーがデータセンターに置き換わりつつある。これは、モバイルだけではなく自動車や店舗などのあらゆるデバイスがデータセンターにつながる「デバイス・データセンター」と呼ぶべき新しいアーキテクチャ、新しい時代と言える。これにともない、システム設計の考え方も根本的に変えなければならなくなっている。
この動きは、Googleなどのコンシューマー分野のベンダーが先行しているが、IT全体がこの方向に向かっていることは間違いない。「それはメガデータセンターのこと。我々には関係ない」と思っていてはダメだ。本当に、「次のステージ」に入っている。夢物語ではなく、すでにコンシューマー分野で実現している「リアリティ」だということを、直視すべきである。
ビジネスに貢献できる人材がいない
問題は、システムのあり方とIT部門の要員のスキルという2つの点で、「現状」と「今起こりつつある新しいリアリティ」との間に相当な「ギャップ」があることだ。このギャップを埋めるためには、一度、情報システムのあるべき姿を考え、あるべき姿に到達するためのシナリオを描く必要がある。「では、どういうシステムを作ればよいのか?」とよく聞かれるが、システムだけの話ではない。要員のスキルも非常に重要だ。
現在のIT部門の要員は、業務システムを維持(運用管理)することは得意だ。しかし、新しいことを考えたり、それをビジネスにどうつなげるかを考えたりする人材がいない。ビジネスに貢献できる人材がいないのだ。こうした議論があまりないことも問題だ。今後のIT部門に必要な要員のプロファイルが、はっきりしていない。
ちなみに、現在のIT部門の主な業務である運用管理は、明らかに自動化の方向に向かう。そもそもデバイス・データセンターになると仮想マシンの台数が極端に増え、ハイブリッドクラウド化も進むので、運用管理が複雑化する。このため、いずれ、人間の手作業では管理できなくなる。今後、運用管理の自動化は必須だ。今は自動化を必要としていなくても、会社が今後成長しようとすれば、今までのやり方ではもたなくなる。