「従来のネットワークのままでは、この先、ITインフラは運用していけなくなる」

 企業やそのシステム構築を手掛けるインテグレータ各社から、こうした声が噴出している。背景にあるのは、サーバー仮想化の急浸透だ。

 当初、サーバー集約を目的とした部門単位の導入が多かったサーバー仮想化技術は、次第に全社的なサーバー基盤として導入されるようになってきた。いわゆる“プライベートクラウド”である。日立製作所の嶽山康則クラウド本部クラウドサービス部主任技師は「サーバー仮想化環境を導入した企業では、仮想マシン(VM)の数が1年で5倍から10倍に増えている」という。

 ところが、活用が進むにつれて、ネットワークのせいで、必ずしも期待通りにプライベートクラウドを構築、運用できない事実が顕在化してきた。こうした状況への不満が強烈な外圧となって、ネットワーク技術あるいはネットワーク設計法に変革が求められている。

プライベートクラウドを支えきれない

 仮想化技術によって、サーバーは効率良く運用できるようになった。1台のサーバーハードウエアに多数の仮想マシンを収容し、コストを抑えられる。本来なら、VMの立ち上げ、移動などのソフトウエア制御により、処理量の変化にも素早く対応できるし、システムの構成変更も手軽に進められるはずである。

 ところが実際には、それを支えるネットワークに複雑な設計と煩雑な設定が必要になる。例えばVLANで細かくブロードキャストドメインを区切る、サーバー上で動作するシステムごとに帯域を確保する、ループを作らないようにしながら冗長化する、という具合である。しかも仮想化環境では、ネットワーク構成要素であるスイッチの一部が、「仮想スイッチ」の形でサーバー内部に収まっている(写真1)。従来通りのネットワーク設計が必ずしも通用しない。

写真1●ヴイエムウェアのサーバー仮想化ソフト「vSphere」における仮想スイッチの設定画面
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 運用面でも、VMの起動、移動などの操作の多くでネットワークの設定変更を伴い、時間と手間がかかる。そのために、期待通りの手軽さやスピード感で、プライベートクラウド運用をできずにいるわけだ。ほかにも、1台のサーバーマシン上で多数のVMが動作するプライベートクラウドと、従来のネットワーク設計手法では相性が悪い点がいくつもある。

 そして最近は、さらにユーザーの不満を加速させる要因が生じつつある。プライベートクラウドとともに広がりだした「クラウドコントローラー」がそれ。クラウドコントローラーは、クラウドのICTリソースを管理・制御するシステム。オープンソースの「OpenStack」「CloudStack」「Eucalyptus」などが著名である。

 クラウドコントローラーはICTリソースの1つとしてネットワークを制御する。特にVMインスタンスの立ち上げ、移動、終了といった操作を一元的に実施できるため、プライベートクラウドを運用しやすくなる。

 その裏返しとして、ネットワークの問題点が、さらに浮き彫りになりつつある。

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