システムの仮想化が進むなか、ディスクのI/O性能がボトルネックになってきた。サーバーのスペック向上で、より多くの仮想マシンを稼働できるようになった分、I/Oにしわ寄せが及んでいる。仮想マシン上で動く高速化ソフトや、専用ストレージなど、仮想化環境のI/O性能を高める製品が続々登場している。

 仮想化環境で、ディスクのI/O性能を“押し上げる(Boost)”製品が注目を集めている(図1)。仮想化したサーバー上では、数多くの仮想マシンを稼働させる。各仮想マシンのI/O要求は「仮想化ソフト(ハイパーバイザー)」が一手に引き受け、ディスクとのやり取りを仲介するが、その負荷が性能のボトルネックになってきた。

図1●I/Oを高速化する製品の例
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 日本ユニシスが2012年11月に出荷開始した「VDI Storage Booster」は、仮想デスクトップ(VDI)をターゲットにした製品。VDIでは、1サーバー当たり100台を超える仮想マシンを動かすことが珍しくない。しかも、端末が一斉にログオンする際には、「ブートストーム」と呼ばれるバースト的な負荷が発生するため、それを乗り越えられる「IOPS(1秒間に可能なI/Oの数)」が必要だ。

 日本ユニシスの子会社ユニアデックスの戦略マーケティング部 仮想化エバンジェリストの村上努氏は、「50クライアントでブートのテストを行ったが、標準ストレージで27分かかるところ、VDI Storage Boosterを導入したら9分で終わった。簡単にIOPSを高められるので、SANが不要になるケースもあるだろう」と話す。

 VDI Storage Boosterは、米アトランティス・コンピューティングが開発しネットワールドが販売する「Atlantis ILIO」と同じ製品だ。Atlantis ILIOの仕組みから、仮想化環境でIOPSを引き上げる機能を見よう。

 Atlantis ILIOは、仮想マシン上で動作するソフトウエアだ。「WindowsのクライアントOSを搭載した各仮想マシンから、Atlantis ILIOはデータストアに見える」(ネットワールド マーケティング部 VDIグループの大城由希子氏)。各仮想マシンからのI/O要求を受け取ったAtlantis ILIOは、それらをまとめてディスクI/Oを行う。その際、いくつかの機能により、I/Oの高速化を図っている(図2)。

図2●Atlantis ILIOの仕組み
図2●Atlantis ILIOの仕組み
仮想マシンが出したI/O要求は、Atlantis ILIOが優先度の最適化や、重複排除などを行い、ストレージに対してまとめて処理する

 特性解析機能では、各仮想マシンでどのような処理が行われているかを解析。その結果に基づいて、ファイルI/Oが発生した際に処理の優先度などを最適化する。またインテリジェントキャッシング機能により、Windows OSやアプリケーションのファイルなどをメモリー上にキャッシュしておき、ユーザーの体感パフォーマンスを向上させる。

 各仮想マシンから受け取ったI/O要求を単純にまとめているわけではない。重複排除機能を使い、各仮想マシンの書き込み要求データの中から重複部分を取り除く。サーバー側で重複排除するので、ストレージに対して重複したデータを書き込まずに済む。

 さらにディスクへの書き込みに際しては、仮想マシンが発するランダムなI/O要求を、最大64キロバイトのブロックにまとめ、シーケンシャルに書き込む。これらの機能を駆使することで、「I/O要求は7割削減、ディスク容量は8割削減できる」(大城氏)。

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