仮想化やクラウドの浸透で、システム運用がますます複雑化してきている。このため、従来の「属人化」した運用では、もはや対応できなくなってきた。システム運用の品質向上、効率化は、企業にとって「待ったなし」の大きな課題である。

 そこでITpro Activeでは、システム運用のコスト削減や品質向上、効率化に大きな効果がある「運用自動化」をテーマに、システム課題解決セミナー「システム運用の劇的改善に効果有り!ノウハウを簡単に自動化する方法」を、2013年3月5日に東京で開催した。

 プライスウォーターハウスクーパースの藤田泰嗣氏が情報システム戦略におけるシステム運用の重要性や運用コストを削減するポイントについて講演したほか、日立製作所と伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が、運用自動化を支援する製品/サービスを紹介。トークセッションでは、運用自動化の意義やニーズ、成功のポイントなどについて議論した。

基調講演
情報システム戦略を妨げるコスト視点での課題

 基調講演では、システム運用分野に詳しいプライスウォーターハウスクーパースの藤田泰嗣氏が、企業の情報システム戦略を妨げるコスト視点での課題について解説した。事業成長のためのシステム投資を増やすためには、運用コストを減らす必要があるとし、そのためのポイントについて詳しく解説した。

プライスウォーターハウスクーパース
シニア マネージャー
藤田 泰嗣氏

 藤田氏はまず、「事業成長に向けたシステム投資を増やすためには、運用コストを低減して投資の余地を拡大することが不可欠」としたうえで、「運用コストは情報システムコスト全体の約40%に減らすことが、目標になる」と強調した。

 藤田氏によれば、情報システム部門の支出には、5種類あるという。1つは、「保守運用コスト」。2つめは、ITガバナンスなどのITの全体能力向上のための「成熟度向上投資」。3つめは、業務改革のためのシステム更改新などの「業務改善投資」。4つめは、新規ビジネス実現のためのシステム構築導入や更改新などの「事業成長投資」。そして5つめが、部門が個別に利用しているシステム、パソコン、ライセンスなどの「未可視化コスト」である。

 このうち、「成熟度向上投資」「業務改善投資」「事業成長投資」を最大化するためには、標準化や外部へのアウトソーシングなどにより、保守運用コストを低減することが重要になるという。

ITコスト構造を把握し、最適なアプローチでコストを削減する

 コスト削減のために新規IT投資を減らしたものの、保守運用の固定費が大きく、思ったほどコストを削減できなかった---よくあるケースだが、これは、「経営層が情報システムのコスト構造を把握していないことが原因」と、藤田氏は指摘する。

 このため、ITコスト削減のためには、まず、ITコスト構造を把握しておく必要がある。藤田氏は、「ITコストの種類によって、削減効果の現れる時期や削減のアプローチは異なる。目的に応じて、ITコストの対象範囲と優先順位を明確にする必要がある」と指摘する。

 では、ITコストはどのような構造になっているのか。藤田氏によれば、まず大きく2つに分類できるという。1つは、「物件費」。もう1つは「人件費(社内)」である。物件費は、さらに「外部流出費」と「新規投資」に分かれる。つまり、ITコストは(1)外部流出費、(2)新規投資、(3)人件費(社内)の3つに分類される。

 1つめの「外部流出費」は、コスト削減効果が最も早く現れる(3~6カ月程度)。コスト削減のアプローチは契約単位での詳細な調査による契約条件や委託先の見直しとなる。

 2つめの「新規投資」に関するコスト削減のアプローチは、評価プロセス(投資効果分析、実施案件と優先順位の設定、事後評価)の構築と実行による投資案件の絞り込みとなる。コスト削減効果現出までの所用期間は6カ月程度である。

 3つめの「人件費(社内)」は、コスト削減の効果が現れるのが最も遅い(6~12カ月程度)。コスト削減のアプローチは管理範囲の拡大、要員稼働率の向上、そして外注化/内製化の見極め、となる。

人件費の外注化/内製化を見極める

 次いで藤田氏は、人件費(社内)における外注化/内製化の見極めを行うための2つの評価軸を紹介した。1つは、自社業務・システムに対する理解が必要かどうか。もう一つは、外部委託費用と人件費(社内)のどちらが経済的か。この評価軸を用いると、以下のように、業務を4つに分類できる。

(A)「自社業務・システムに対する理解が不要」で「外部委託費用の方が経済的」
帳票仕分け、PCセットアップ、ITトレーニングなど

(B)「自社業務・システムに対する理解が必要」で「外部委託費用の方が経済的」
運用オペレーション、社内ヘルプデスクなど

(C)「自社業務・システムに対する理解が必要」で「人件費(社内)の方が経済的」
IT中長期計画策定、システム化企画、ベンダーマネジメントなど

(D)「自社業務・システムに対する理解が不要」で「人件費(社内)の方が経済的」
Webページの軽いメンテナンス、性能調査・分析など

 藤田氏は、(A)と(C)については非常に明解という。(A)は外注化すればよく、(C)は内製化すればいい。

 (B)については、「外部の要員が実施可能な業務を抽出して外注化を推進するべき」と指摘する。ただし、運用オペレーションについては、運用自動化ツールなどで効率化できれば、(B)から(C)に移すことができる。(D)については、「中長期的に発生する業務を抽出して内製化を推進するべき」という。

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