企業においてクラウドコンピューティングの活用機会は、着実に増加する傾向にある。しかし、システムのサイロ化やシャドウITなど、クラウドに起因する課題を抱える例も少なくない。本連載では、クラウド基盤への移行を検討する企業が十分な価値を享受するために求められる統合シナリオのあり方について考察する。

 クラウド基盤をオンプレミスで所有するプライベートクラウドにおいては、自社標準のクラウド基盤をいかに設計するかが重要となる。IT部門は、標準化、自動化、ITサービス管理の能力を具備することが求められている。

 ITRが昨年秋に実施した「IT投資動向調査2013」によれば、現在、約40%の企業がプライベートクラウドに投資をしており、12%の企業が来期は同投資を増額するとしている。その一方で、同投資を減額する予定の企業は1%にとどまっており、多くの企業がプライベートクラウドの構築・拡充を進めていると言える。

 こうした高い需要の背景には、グループワイドでのIT効率化といった純粋な改善ニーズに加えて、ユーザー部門が自社のIT部門に寄せる期待や不満がある。事業部門のユーザーや経営幹部は、外部のパブリッククラウドを利用すれば、初期投資を抑えて迅速にシステム構築できることを知っている。「よそでは1日で環境構築できるのに、なぜわが社は2週間もかかるのか」というわけだ。パブリッククラウドの出現によって、IT部門はこれまで以上に激しい市場競争にさらされており、このことはグループIT基盤をクラウド化する意欲を生み出している(図1)。

図1●プライベートクラウドの実現アプローチ(出典:ITR)
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