分析するビッグデータは、自社だけで集める必要はない。むしろ積極的に、社外のデータを活用していくべきだ。自社で集めたデータだけを活用していると、分析の視点が固定化され、視野も狭くなってしまう。
例えば、異業種企業との提携やポイントプログラムに参加することで、自社単独では収集困難なデータを入手できる。ソーシャルデータをはじめとした外部データの提供サービスを利用するのも、ビッグデータ活用の近道だ。
旅行業と音楽業が手を結ぶ
エイチ・アイ・エス(H.I.S.)は2012年12月、CD販売のローソンHMVエンタテイメント(HMV)と共同で「HMV×H.I.S. 音旅キャンペーン」を始めた(図8)。それぞれのFacebook公式ページの「いいね」ボタンをクリックすると、H.I.S.やHMVなどで使えるクーポンが当たる。
H.I.S.が異業種のHMVと手を組んだ背景には、ビッグデータによる裏付けがある。
きっかけは、2012年8月に実施したTwitterのキャンペーンだった。行きたい場所とそこで聴きたい曲をつぶやくと、H.I.S.などで利用できるポイントが当たるキャンペーンを実施したところ、両社ともTwitterのフォロー数を伸ばせた。データを分析したところ、「音楽と旅行の関係性は強く、相互送客につながる可能性が高い」(H.I.S.本社事業開発室の山岡隆志室長)ことが分かったという。
H.I.S.が社外データの入手を推し進める舞台は、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)にとどまらない。三菱商事グループのロイヤリティマーケティングが運営する共通ポイントサービス「Ponta」のデータも活用する。例えば、HMVでロックのCDを購入する顧客は、H.I.S.でどういったプランの旅行を申し込む傾向が強いのか、といったことが把握できる。
山岡室長は「1社だけでデータを活用する時代は終わった」と強調する。Pontaのデータを活用する「CRM研究会」への参加などを通して、業種横断でのビッグデータ活用を進めていく計画だ。
ネットサービスで競合把握
自社業務とは直接関係しないネットサービスを介して、社外のデータを入手しているのが銀行や証券などの金融サービスを手掛けるSBIホールディングスだ。