今回は、2012年に起こった重大ニュースを日経コミュニケーションモニター読者に尋ねた。(1)サービス/インフラ、(2)業界動向/制度、(3)インターネット/セキュリティ、(4)端末/アプリの4分野から編集部が選んだ33個のニュースを提示。回答者に1位(5ポイント)から5位(1ポイント)までを選んでもらい、合計ポイントで順位を付けた。
上位2つが拮抗、3位に大差
1位は「ファーストサーバでデータ消失と情報漏洩の大規模障害」。ファーストサーバはヤフー傘下で知名度が高いだけでなく、データ復旧に失敗した揚げ句、情報漏洩まで起こしたことで大きな話題となった。「外部にデータを預けるリスクに改めて気付かされた。大手を含む多くの企業がデータ消失へのリスク対応を実施していないことにも驚いた」(卸・小売業)とする声は多い。2011年の重大ニュースで1位を獲得した「スティーブ・ジョブズ氏の死去」と同じ394ポイントだった。
2位は「パソコンの遠隔操作ウイルスで誤認逮捕が相次ぐ」で、369ポイントを獲得した。一般ユーザーの対策の甘さを指摘する意見もあったが、「いつ自分が当事者になるか分からず、本当に怖いと思う」といった声が目立った。実際、セキュリティ対策を実施していても、未知の脆弱性を突かれた場合は同様な被害を受ける可能性を否定できない。記事執筆時点で真犯人はまだ逮捕されておらず、注目度が依然として高い。
実は順位を付けずに選んだ得票数では、ファーストサーバの96票に対し、遠隔操作ウイルスが104票と最も多い。得票率に換算すると、前者が48.7%、後者が52.8%と、ともに約半数を占める。ただ1位に推された投票数の差で、ファーストサーバ(50票)が遠隔操作ウイルス(29票)を上回る結果となった。トップ10ではこの2つが突出し、3位のWindows 8に170ポイント以上の差を付けた。
ソフトバンクの動向に注目集まる
通信事業者関連では「ソフトバンクが米携帯電話3位のスプリント・ネクステルの買収を発表」が193ポイントで4位に付けた。201億ドルの大型買収だけに1位も予想されたが、国内ユーザーにはほとんど影響がないためか、伸び悩んだ。
むしろ順位を付けずに選んだ得票数では「イー・アクセス買収を発表」が66票(3位)と、スプリント・ネクステル買収の55票を上回っていた。イー・アクセス買収については「爆発するトラフィックに対応するため、帯域を買い取った格好だが、そうしなければならないほど切羽詰まっているのだなと感じた」(運輸・物流業)といった意見が出ている。ソフトバンク関連は総じて注目度が高く、「プラチナバンド(900MHz帯)の獲得」も143ポイントの9位と健闘した。
ほかでは「NTTドコモでインフラ障害が続く」も188ポイントの5位に付けた。ネットワークの信頼性には定評がある同社だが、1月、7月、8月、11月と相次ぎ障害を起こしたこともあり、1位に推された投票数は全体で3番目に多い。「KDDIやソフトバンクは良い話が多かったが、NTTドコモは暗い話が多かった」(サービス業)との意見に代表されるように明暗の分かれた一年だった。「安心神話が崩れた」(情報・通信業)と厳しい声もあった。
2012年はタブレット端末を中心に新機種が多数登場したことも大きな特徴だった。3位のWindows 8以外のランキングはアップルの「iPhone 5」が7位、「iPad mini」が14位、グーグルの「Nexus 7」が17位、アマゾン・ドット・コムの「Kindle」が19位、マイクロソフトの「Surface」が21位といった結果になった。「スティーブ・ジョブズ氏の亡き後、下火になるかと懸念したが、アップル製品が引き続き社会現象を巻き起こした」(サービス業)というように、アップル人気は依然として根強い。グーグルやマイクロソフトなどの攻勢で、この構図が今後どう変わっていくかに注目が集まる。