カーセブンディベロプメントは、スマートデバイスの業務アプリを使って新事業モデルを生み出した。そのアプリを開発した最初のプロジェクトでは、従来の開発手法を用い、テストでトラブルを招いた。2回目のプロジェクトには発想を切り替え臨み、文字入力を減らすなどアプリの操作性を大きく高めた。

 中古車FCチェーン「カーセブン」を運営するカーセブンディベロプメントは2012年8月、即時オークション型の新しい事業モデルを始めた。

 従来の事業モデルは、カーセブンの加盟店(ここではカーセブンディベロプメントも加盟店の一つとして説明する)がそれぞれ車を買い取って販売。販売しきれない車は、外部のオークション会場で売却するというもの。加盟店間で車を融通する仕組みはあるが、それが有効に機能しているとはいえず、買い取った車のうち6割程度を外部のオークション会場で売却してきた。このコストの圧縮が経営課題の一つになっていたという。

 新事業モデルでは、加盟店にその店で販売できそうにない買い取り対象車が持ち込まれると、加盟店間で即時オークションを行い、販売できる店が車を買い取る。こうして外部のオークション会場での売却を減らすわけだ。

 即時オークションの流れは、次のように単純である(図1)。まず、加盟店の買い取り担当者は、店舗あるいは客先から、AndroidまたはiOSのスマートデバイスの業務アプリを使って、車体のキズの写真データをはじめとする査定情報を入札システムのサーバーに送信。すると、ほかの加盟店が査定情報を見て入札する。入札締め切り後、落札価格が買い取り担当者に通知され、顧客が納得すれば買い取りとなる。

図1●スマートデバイスを使い新しい事業モデルを確立
カーセブンディベロプメントは、操作性の高い、スマートデバイス用の業務アプリを開発。それを基に、買い取り対象車を、加盟店間で即時オークションにかける新しい事業モデルを確立した
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 オークションには1時間程度を要するので、顧客がすぐ買い取ってほしい場合は、従来の事業モデルの通り加盟店が査定し買い取る。それでも新事業モデルを併用することで「外部のオークション会場での売却を減らせるようになった」と、事業企画やシステム開発を担当する飯塚誉規(たかのり)氏(コーポレートマネジメント&プランニング グループ シニアマネージャー)は話す。

オフィス外の業務をシステム化

 実は即時オークション型の新事業モデルは、スマートデバイスで従来の買い取り業務を効率化する「インスマートシステム」のプロジェクトの延長線上に生まれた。インスマートシステムは、買い取り担当者から本部に車の査定情報を伝える手段を、電話およびファクシミリからスマートデバイスに切り替え、さらにワークフローシステムを導入し、査定時間を縮めるもの。このインスマートシステムを、新事業モデルで使っているのだ。

 インスマートシステムの眼目は、査定情報の送信手段の電子化だった。買い取り担当者の誰もが感じていた課題を解消したものにすぎず、斬新な発想が起点になったわけではない。しかしオフィス外で行う買い取り業務は、ノートPCでも適用が難しくシステム化できなかったという。スマートデバイスによって、そうした業務でもシステム化が可能になり、即時オークションという業務変革につながった。

 さらに、業務変革を生んだ大きな要因の一つとして、「インスマートシステムのスマートデバイス向け業務アプリの操作性を高められた」(飯塚氏)ということが挙げられる。詳しくは後述するが、内蔵カメラを利用するなどして文字入力を徹底的に減らした。

 ただし最初から開発プロジェクトがうまくいったわけではない。以下で、インスマートシステムの開発プロジェクトで生じた問題とそれを乗り越えた工夫を見ていく。

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