本連載では、生産管理パッケージを用いて生産管理システムを構築する際の留意点を解説します。生産管理システムは、現場の業務運営と密接に絡むため、導入作業に失敗すると業務そのものが回らなくなる怖れがあります。また、パッケージの機能を理解するには、生産管理理論の勉強が必要です。そのため、生産管理システムの導入作業は、基幹業務システム導入の中でも最も難易度が高いといわれています。

 最初に市販された生産管理パッケージシステムはIBMが約40年前にリリースしたMRP生産管理パッケージ「COPICS(Comminications Oriented Production Information and Control System」だといわれています。COPICSの登場以来、様々なベンダーから数多くの生産管理パッケージが市販されてきました。独立のパッケージとしてではなく、ERPパッケージの生産管理モジュールとして提供されたものもあります。

 こうした生産管理パッケージの大半は、MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)という生産管理手法をベースに作られています。

 一般的な生産管理システムでは、構成部品表(BOM:Bill Of Material)を使って部品展開することで製品を構成する部品の必要数量を算出します。MRPシステムは、部品展開の際に数量だけでなく各構成部品の手配時期も含めて展開計算をすることを特徴としています()。MRPの展開計算がうまく機能すると、各製造工程が部品を使うタイミングにちょうど部品が手に入るように部品手配をすることができます。いわゆる「ジャストインタイム」の実現です。

図●MRP計算の考え方
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 ジャストインタイムというと、トヨタ生産方式の「かんばんシステム」を思い浮かべる人も多いと思いますが、MRPシステムも当初からジャストインタイムを実現することを売りにしていました。MRPシステムによるジャストインタイムは部材調達作業の効率化、滞留部品在庫および仕掛在庫の削減、欠品による製造工程の稼働停止抑制(安定稼働の実現)に効果があるとされてきました。そのため、構成部品数が多い組立型製品製造企業を中心に導入が進みました。

 MRPの展開計算ロジック自体は、それほど複雑ではありません。ただし、実際に計算するためには構成部品表(BOM)に加えて、現在の在庫データ、各部品の調達期間(リードタイム)データや製造工程の作業時間(リードタイム)データなどの大量のデータを使った計算処理が必要となります。そのため、MRPの展開計算を手作業で実施するのは難しく、コンピュータの利用が前提となります。そのこともあって、コンピュータを使った生産管理パッケージといえばMRPをベースにしたもの、という流れが一般化しました。

 COPICSはIBM製の大型汎用コンピュータ用に開発されたパッケージでしたが、その後、生産管理パッケージシステムが動くプラットフォームは国産コンピュータ、オフコン、サーバー、パソコンと広がっていきました。当初は大型汎用コンピュータでも一晩かかって計算していたMRP展開計算ですが、コンピュータの処理能力が向上したため、現在は数分で計算することができるようになりました。

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