数週間ほどの短期間でシステム開発を依頼されることが増えてきた。従来の感覚で「無理だ」と断じるのは早計だ。新たなツールや手法を駆使し、素早くユーザーにシステムを届けよう。

 ユーザーから急なシステム開発を要請されることが珍しくなくなった。FAXの送受信サービスを手掛けるトランザクトの大嶋ゆかり氏(カスタマー・サポート部 部長)は2012年3月「サービスの問い合わせが2週間後に急増することが予測され、急遽システムを新規開発する必要が生じた」と話す。また、酒類卸大手の日本酒類販売の石津秀信氏(情報物流本部 情報統括部 情報企画課 課長代理)は「ビジネス環境がめまぐるしく変わるので、平均で1日2件以上の追加開発依頼が来ている」という。

 このような場合、従来は二つの対応が考えられた(図1左)。一つはITエンジニアが無理をしてシステムを構築するケース。もう一つは、期間が短いことを理由にITエンジニアが構築を断り、ユーザーがあきらめるケースだ。

 しかし、短期開発を実現するツールや手法の選択肢が増え、こうした状況が変わり始めている。画面とデータ項目を定義するだけでプログラミングせずにDBアプリを作成できるツールや、OSのシェルスクリプトだけで開発する手法などだ(表1)。

図1●急なシステム開発で起こる問題と、短期開発のポイント
「単機能に絞り込む」「Excel をひな型に」「スクリプト活用」の三つが有効だ
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表1●今回の記事に掲載した短期開発を実現するツールや手法
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 これらを駆使すると、今まで不可能だった短い期間でのシステム開発が可能になる。ユニット住宅の販売・施工を手掛ける茨城セキスイハイムの小松本 成人氏(総務部 業務グループ システム課 次長)は東日本大震災のとき、たった2日で震災対応用のシステムを構築した。「短期開発ツールを駆使したことで可能になった」(小松本氏)。

 短期開発ツールを使いこなしてユーザー自ら開発する例もある。音響機器メーカー、オーディオテクニカの豊島孝徳氏(管理部 人事課 マネージャー)は「これまでならシステム部門に断られていたような短期案件でも、自分たちで開発できるようになった」という。

 これらの短期開発ツールや手法は、必ずしも大規模開発でも通用するものではない。しかし、小回りが利き、今まであきらめていた領域のシステム開発が可能になる意義は大きい。従来の開発の進め方だけにとどまるのではなく、新しいツールや手法を使いこなす体制を整えておくことが、これからの開発現場には重要になる。

 以下では、短期開発ツールや手法を使った事例を紹介する。各事例において、ツールや手法のメリットを生かす短期開発のポイントは大きく三つに分類できた(図1右)。「単機能に絞り込む」「Excelをひな型にする」「スクリプト活用」である。順に見ていこう。

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