セキュリティ強化や管理の効率化といったメリットが享受できることはもちろん、柔軟なワークスタイルにも対応できることから、デスクトップ仮想化の導入が確実に進んでいる。その一方で、性能劣化やコストの高さといった課題も明らかになってきた。こうした課題を解決できる製品や具体的なノウハウが、求められていると言える。

 そこで、ITpro Activeでは、ITpro Active製品選択支援セミナー「デスクトップ仮想化/リモートデスクトップ~ワークスタイルの変革へ向けて~」を、2012年11月29日に東京で開催した。日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEOの宮原徹氏がデスクトップ仮想化の動向とシステム構築のポイントを解説したほか、主要ベンダーが自社のソリューションを紹介。最後に、『日経コンピュータ』誌の森山副編集長が、仮想デスクトップ構築のコストを抑える方法を解説した。

基調講演
デスクトップ仮想化の最新動向とシステム構築のポイント

 基調講演では、日本仮想化技術 代表取締役社長兼CEOの宮原徹氏が、デスクトップ仮想化の最新動向とシステム構築において考慮すべきポイントを語った。

日本仮想化技術
代表取締役社長兼CEO
宮原 徹氏

 デスクトップ仮想化の最新動向について宮原氏は、「導入が進み、メリット、デメリットが明確になってきた。また、これまではセキュリティ対策として導入するケースが多かったが、最近では投資対効果や業務最適化を目的とした“攻めの”導入が増えてきている」と指摘する。

 そのうえで宮原氏は、クライアント仮想化の手法としては、デスクトップ/ノートPC環境をそのまま仮想マシンとして稼働させる「デスクトップ仮想化」以外にも、デスクトップの表示のみをクライアントに転送する「プレゼンテーション仮想化」や、アプリケーションをカプセル化してクライアントにダウンロードする「アプリケーション仮想化」といった選択肢もある、と説明。「フレキシビリティを求めたり、タブレットなどで特定のアプリケーションのみを使いたいといった様々なニーズがある中で、多くの選択肢が浮かび上がってきた」という。例えば、タブレットで特定のアプリケーションしか使わない場合は、プレゼンテーション仮想化やアプリケーション仮想化も選択肢となる。

 デスクトップ仮想化を実現する主な製品としては、「XenDesktop」や「VMware View」「Microsoft VDI」がある。宮原氏は、「それぞれの製品の差別化要因はなくなりつつある」としたうえで、XenDesktop 5.6については、システムイメージとユーザーデータを別個に持てる「Personal vDisk」や、「XenApp」と連動できること、「Provisioning Server」でマスターシステムイメージが管理できることを注目ポイントとして挙げた。VMware View 5については、「VMware View Storage Accelerator」で起動イメージをキャッシュし、仮想マシンの多重起動を高速化できることが特徴とした。

 マイクロソフトについては、「『Windows Server 2008』ベースのハイパーバイザー『Hyper-V』では中規模以上の仮想化システムを運用することは困難なことが多かったが、『Windows Server 2012』ではHyper-Vが刷新され、かなり良くなった」と宮原氏は指摘する。マイクロソフト製品でのワンストップソリューションを構築しやすくなったほか、プレゼンテーション仮想化の「Remote Desktop Service」やアプリケーション仮想化の「Microsoft Application Virtualization 5.0」も使いやすくなってきたという。

 一方、ハードウエアの動向については、(1)CPUのマルチコア化によってデスクトップ仮想化の実行性能が向上していること、(2)メモリー価格が下落し大容量メモリーが搭載できること、(3)高速なSSDが利用できるようになったことを挙げ、ソフトウエアだけでなくハードウエアも、デスクトップ仮想化に向けたボトルネックはほぼなくなりつつあるとしたうえで、「これからは構築や運用のノウハウが重要になってくる」と指摘した。

システム構成・運用の肝はストレージ

 講演の後半で宮原氏は、デスクトップ仮想化システムを構築する際のポイントを解説した。

 まずは、システム要件定義だ。ここでは(1)機能要件(実行するOSやアプリケーション、使用する端末の種類、運用管理の方法)、(2)性能要件(反応速度、回線速度、クライアント台数とユーザー数)、(3)将来要件(今後のアプリケーションやクライアント台数、ユーザー数の増加)を決める。

 ソリューションや製品の選択では、(1)コスト、性能(特に転送プロトコルやファイルI/O)、管理機能のうちどれを重要視するのかという優先順位付け、(2)デスクトップ仮想化のみにするか、それともプレゼンテーション仮想化やアプリケーション仮想化といった他のクライアント仮想化技術を併用するか、(3)オンプレミスで運用するのかDaaS(Desktop as a Service)を利用するのか、(4)モバイル環境での利用を想定するのか---といった点がポイントになる、と宮原氏は説明する。

 システムの構成・運用の設計については、「ストレージが肝だ」と宮原氏。I/Oの集中や分散を考慮したストレージを設計し、性能が足りなくなった際のスケーラビリティも考慮すべきだという。

 運用管理については、「上級エンジニアは人手不足なので、ここでシステムに詳しいエンジニアを管理要員として投入するよりも、ツールで解決できることはツールを使うことを考えるべき」と言う。さらに、「ユーザーにデスクトップ仮想化を意識させないためのベストソリューションはまだ存在しない」と指摘したうえで、「早くからユーザーも巻き込んだ事前検証が必要だ。エンドユーザーの協力を得ないとうまくいかないこともある」と警告した。

 システムのサイジングについては、特にストレージの性能サイジングが重要という。「ハードディスクが遅いと安易にSSDを使いがちだが、これだと個別最適にしかならない。全体最適を考えると高速なSSDと容量を稼ぐハードディスクを併用すべきだ。その際、パソコンのディスクのIOPS(I/O Per Second:1秒あたりのデータの読み書き回数)や待ち時間などの指標を見ておかないと詳細な設計ができない。こうした数値を見える化したうえでサイジングしてほしい」と宮原氏は強調した。

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