本稿はクラウドストレージ・サービスの価値、およびその選択・活用ポイントを紹介する連載(全5回)の最終回となる。前回は、DR(ディザスタリカバリの略。被害からの回復措置災害復旧のこと)のためのクラウドストレージを選択する上での主要ポイントについて述べた。今回は、DRのためのクラウドストレージ活用のポイントについて述べる。

従来手法との違いを十分理解したうえで活用する

 BCP(事業継続計画)やDRを検討したことがない企業であっても、システムバックアップを行っていないユーザー企業は非常に少ないだろう。それだけバックアップやリストアは、企業ITにとって普通の作業になっている。

 クラウドベースのバックアップおよびリストアも、基本的には従来の手法と全く違うわけではない。ただし、従来のオンプレミス型システムとは異なる部分も多い。そのことを十分に認識していないと、クラウドの利点を損なう利用方法になってしまうため注意が必要である。以下、注意すべきポイントを列記する。

1.バックアップ用ストレージ容量を多めに見積もる必要はない

 クラウドの特長の1つは、ストレージ、CPU、メモリーなどのITリソースを迅速かつ自由に伸縮可能なことである。この特長を理解せずに、数年後にシステム利用者や利用ディスク容量が拡大することを見越して、余裕のあるクラウドストレージをDR用に準備する企業も少なくない。

 ハードディスクなどのハードウエアストレージの場合、ディスク追加には費用と時間がかかる。容量を少しだけ増やすことができないし、利用者減少などの理由で利用容量が減少した時でもストレージを減らすことができない。これに対し、クラウドストレージの場合、いつでも迅速に容量の増加・減少が可能なので、余裕を持ってサイジングをする必要はない。

2.徹底した自動化を促進する

 自社データセンターに設置してあるストレージとは違い、クラウドストレージの場合、マシンを直接操作したり、動作ランプなどを見て視認することはできない。すべて遠隔操作が基本となる。遠隔操作を行うためには、何らかのコマンドを使うか、専用のソフトウエアを使うことになるだろう。

 従来のバックアップ/リストア作業は、テープ交換などに代表されるように運用担当者による人的作業という色彩が強かったが、クラウドベースのDRはITシステムを駆使した手法にならざるを得ない。この点を活用して、徹底的に自動化を図ることを考えるべきである。つまり、クラウドベースのDRでは、従来手法より人的な作業工数を飛躍的に削減することが可能になるのである。

3.ネットワーク転送量の圧縮を図る

 従来のDRでは磁気記録テープのような“物体”を保管場所まで輸送することが多かったが、クラウドベースのDRの場合、ネットワーク経由でバックアップすることが基本となる。

 クラウドサービスの多くは、ネットワーク経由のデータ転送量に応じた従量課金を採用している。このような場合、ストレージの利用料金よりも、ネットワークの従量課金のほうが高コストになることも少なくない。「仮想マシンイメージや初期バックアップのデータは磁気記録メディアを使ったオフラインでデータ移動する」「常に差分データのみをバックアップする」「バックアップデータを圧縮して転送する」などの手法を採用してネットワーク転送量の最小化を図るべきである。

 最近、ネットワーク転送に関して従量課金を行わないクラウドサービスも登場しているので、そのようなサービスを活用するのも良いだろう。

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