本稿はクラウドストレージ・サービスの価値、およびその選択・活用ポイントを紹介する連載の第4回目となる。前回は、クラウドストレージによる具体的なDR実現手法について述べた。今回は、DR(ディザスタリカバリの略。被害からの回復措置災害復旧のこと)のためのクラウドストレージを選択する上での主要ポイントについて述べる。
現時点では「DR用クラウドストレージ」と銘打ったサービスを提供している事業者は多くない。多くの場合、クラウドストレージを活用してSI案件としてDRシステムを構築したり、サービスではなく個々の企業に個別に対応したクラウドベースのDRシステムを提供している。
実際、ユーザー企業の利用環境は種々存在し、DR手法も確立されたものがないため、汎用的なサービスとして事業者が提供することが容易ではないのだ。そして、クラウドストレージ・サービスは、基本的にはIaaS(Infrastructure as a Service)のバリエーションの1つとして提供されることが多い。そのため、本稿ではまずIaaSの選定ポイントについて述べることとしたい。
IaaSの選定ポイント
1.サービス内容のチェックポイント
・仮想マシンのCPU仕様だけで性能を判断しない
IaaS事業者の多くは自社の仮想マシンの仕様を「xxxGHz CPU相当」と表示している。しかし、これは、同じ仕様の物理サーバーと同等の性能を示すものではない。同じ仕様の仮想マシンでも事業者によって性能は異なる。IaaSの選定にあたっては、事業者から提供された試験環境で利用を想定しているシステムを稼働させ、パフォーマンスを評価するべきである。
・価格体系を確認し、料金シミュレーションを行う
IaaSの価格比較は、ITRに最も多く寄せられるクラウド関係の質問のひとつである。各事業者は仮想マシン単価などを提示しているが、その価格体系は事業者によって異なり、また多くの事業者が複雑な価格体系を採用している。このため最低価格などの公開情報だけで価格比較を行うべきではない。今後想定される利用クラウドサービスの規模を、小規模、中規模、大規模などのように複数の段階で要求仕様として事業者に提示し、事業者からの見積金額を比較しない限り、IaaSの価格比較はできないと考えるべきである。
図1は、国内大手企業のIaaS導入プロジェクトにおいて、実際に7つのクラウド事業者から取得した見積金額を比較したものである。そして、この結果は単価や最低価格から事前に予測していた結果とは大きく異なるものであった。このように費用はクラウド事業者によって大きく異なることを認識すべきである。