みずほフィナンシャルグループは2012年4月、資生堂は1月、新たな基幹系システムを稼働させた。「タレントマネジメント」を支援するシステムだ。

 計画立案から採用・登用、育成、評価まで、企業の人材活用に関わる一連の作業を、経営者の視点で包括的に実施する。これがタレントマネジメントである(図1)。個々の社員の才能や手腕(タレント)に焦点を当てて進めるのが特徴だ。ヒューマン・キャピタル・マネジメント(人財管理)と呼ぶこともある。

図1●タレントマネジメントの概要
計画立案や評価、採用といった企業の人材活用に関わる全てのプロセスを支援する
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 「全世界を見渡した人材登用や育成を可能にするシステムが今や不可欠」。資生堂の大月重人執行役員はタレントマネジメント・システムの意義を強調する。

 両社のように、本社や国内・海外拠点を対象にグローバルな人材活用を支えるタレントマネジメント・システムを構築する企業が相次いでいる。その先駆けといえるのは伊藤忠商事だ。2010年8月にシステムを稼働、グローバル人材を対象とした幹部候補の登用・育成に利用している。「グローバルでの競争は激化する一方。世界各地域の優秀な人材を発掘・育成し、事業に貢献させる仕組みが欠かせない」と小林文彦執行役員は話す。

情報の範囲と目的が異なる

 多くの企業は既に人事システムを利用している。既存のERP(統合基幹業務システム)にもHR(ヒューマンリソース)などと呼ばれる人事モジュールがある。各社が構築に挑むタレントマネジメント・システムはこれらと何が違うのか。大きく2点挙げられる。

 一つは利用する目的だ。従来の人事システムは、「人事台帳の管理」「従業員の勤怠管理」「給与計算」といった人事部門の業務を支援するのが最大の目的だった。

 これに対し、タレントマネジメント・システムは経営層による戦略遂行の支援を主眼に置く。経営戦略を実現するうえで必要になる「採用計画」「育成計画」「後継者計画」などの立案や遂行、評価を支援する。その途中経過や結果を経営目線で分かりやすく表示する機能も備える。

 もう一つの違いは、対象とする情報の範囲だ。従来の人事システムもタレントマネジメント・システムも、人材データベース(DB)が基本となるのは同じである。

 違うのは、人材DBが持つ情報の幅だ。従来の人事システムは、従業員の名前や所属、職歴、評価といった情報が中心。タレントマネジメント・システムはこれらの情報に加えて、「潜在的な能力」「新規事業への寄与」といった人材に関する様々な定量的・定性的な情報を管理する。経営指標に基づいた様々な指標を使ったり、社内SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を利用したりするなど、あらゆる手段を駆使して情報を集める。

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