日本のIT産業は成熟しており、ITサービスベンダーの国内の売り上げは頭打ちである。今回は、こうした状況で、国内ベンダーがどう行動しようとしているのかを解説しよう。ベンダーの動きを知っておくことは、ベンダーマネジメントの点で、IT部門にとっても有効である。

ユーザーがコストの妥当性に疑問を持ち始めた

 ITサービスベンダーの日本国内の売り上げが頭打ちになっているのは、言うまでもなく、日本の経済の状況が良くないことにある。2012年から2013年のITサービス投資は回復基調がみられるものの、伸びはかなり緩い。

 最近は別の要因も大きい。それは、多くのユーザー企業が、ベンダーへ支払う費用の妥当性に疑問を感じ始めていることだ。「払いすぎているんじゃないか?」と思い始めているのである。

 クラウドサービスについても価格の安さをベンダーはメリットの前面に出しすぎて、今やこれが独り歩きしている。特に経営層が「クラウドを使うならすぐにもっと安くできるんじゃないか」と思い始めている。実際はそう簡単にはいかないことをIT部門は知っているので板挟みの状態だ。

簡単ではない海外展開

 国内市場が頭打ちになっている中、ベンダーが生き残るための戦略の大きな柱が、海外展開である。しかし、「海外で何を売ればいいのか?」となると、実は「よくわからない」というのが実情だ。

 SAPやOracle製アプリケーションのインプリは、確かにニーズはあるだろう。だが、この分野はグローバル・ベンダーやインド系ベンダーも強い。また本当に、地場の競合ベンダーに打ち勝って、食い込めるかどうかは、見えにくい。

 グローバルに展開している日本企業の後方支援やサポートも、ニーズはある。実際、日本企業の5割くらいが「海外に進出する際はシステムの支援を国産ベンダーに頼みたい」と考えている。ただし、ここで問題になるのが、高いスキルを持った人材をいかに確保するかだ。大学レベルの優秀な人材のグローバルな獲得競争に勝つのは、簡単ではない。

 結局、手っ取り早い方法としては、M&A(合併・買収)しかないのだが、これも、売り上げは増やせるが、買収した企業との間で、人材を横展開するのは実は結構難しい。この点は、今後の課題だろう。

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