ソーシャル・イントラを実現するクラウドサービスは以下に紹介するように様々ある。ユーザーの目的に応じて、最適なツールを選択する必要がある。
まず、ソーシャルウエアは大きく二つに分類できる。ソーシャルウエアの機能のみを単独サービスとして提供する「単体型」と、グループウエア機能と統合した「グループウエア統合型」である(図10)。
単体型は気軽に利用を開始できる半面、ユーザーはメーラーやグループウエアなど複数のアプリケーションを常時使い分ける必要がある。グループウエア統合型は社員間のコミュニケーションを一つのサービスで完結させられる。ただし、グループウエアの乗り換えを同時に検討することになる。
単体型とグループウエア統合型では使い方の前提がやや変わってくる。単体型は部や課とは関係なく、エンドユーザーが個別に「グループ」を設定して、互いにコラボレーションする形態が一般的だ。部門の壁を越えた交流や、複数部門にまたがるプロジェクトとの相性がいい。
一方のグループウエア統合型は、従来のグループウエアからの自然な移行が容易だ。従来の部や課といった社内組織を、ソーシャル・イントラのグループに反映しやすい構造になっている。まずは部門内でのコミュニケーション活性化を図り、それを部門外へと広げていくような使い方に向く。
社内のみの利用か、自社外も含むか
社内限定で使うか、協力会社などの社外メンバーも参加するか、という観点でも選ぶべきツールは変わってくる。例えばChatter.com(Chatterの単体版)は、登録時のメールアドレスのドメインが同一のユーザー、つまり社内ユーザーのみでグループを構成する。社外ユーザーは一切参加できない仕様になっている。Yammerは同一ドメインのユーザーを「内部グループ」、異なるドメインのユーザーを「外部ネットワーク」として、参加するグループを明確に区別する。サイボウズLiveは社内外を区別せず、グループに招待したユーザーは同一の立場での参加となる。このほか、文書共有機能やチャット機能のみ、社外ユーザーを限定的に招待できるサービスもある。
ほかのサービスと立ち位置が異なるのが「Facebook Groups」だ。社内外を区別しないだけでなく、公人/私人の区別もない。ほかのサービスのアカウントは社員用に用意するものであるのに対し、Facebook Groupsは「個人」にひも付いたアカウントとなるためだ。社員としての活動も、プライベートの活動も同一のアカウントを利用することになる。ソーシャル・イントラネットの導入支援を手掛けるループス・コミュニケーションズの斉藤社長は「顧客も含めたオープンなコラボレーションを目指す企業に向く」とアドバイスする。
ユーザーインタフェース(UI)の“細かい気遣い”もサービス選択のポイントになる。ループス・コミュニケーションズの斉藤社長は「企業内ソーシャルはエンドユーザーに使ってもらうことが第一の壁になる。そうした点ではFacebook GroupsとYammerのUIは頭一つ抜けている」と評価する。コメントを書かなくとも「いいね!」ボタンで意思表明できたり、自分の書き込みに対する反応を更新ボタンを押さずに通知できたりするUIが優れているという。
ソーシャル・イントラをナレッジマネジメント・システムとして使う場合は、検索機能や分析機能にも注目したい。例えばオーシャンブリッジが販売代理店になっている「Zyncro」は、ファイル内を含めた全文検索が可能だ。
このほか、日本IBMが提供するオンプレミス環境向けのソーシャルウエア「IBM Connections」は、テキストマイニング・ソフト「IBM Content Analytics」と連携して、ソーシャル・イントラの内容を分析できる。「盛り上がっているトピックを抽出したり、頻出キーワードを分析したり、議論の中心となっている人や重要な意見を見つけたりといったことが可能」(日本IBMの大川宗之IBM Collaboration Solutions 事業戦略部 コラボレーション・ソリューション・スペシャリスト)という。
ほとんどのサービスは無償利用できる。有料プランしかないサービスも、申し込めばすぐに使える“お試しプラン”を用意している。まずはいくつか試してみるのが良いだろう。