企業内のコミュニケーションを大きく変える可能性を秘めたソーシャル・イントラ。SNS活用のコンサルティングを手掛けるループス・コミュニケーションズの斉藤 徹社長は、「せっかく導入するのなら、きちんと活用し、定着させなければ意味がない。定着させられないのなら、初めから導入しないほうがいい」とする。

 そこで以下では、先行事例を基に活用のノウハウを見ていく。ポイントは、「目的を明確にする」「使わせる/使わせないルールを設ける」「スモールスタートする」「先導チームを作り定着に向けた施策を打つ」「IT部門は主導しない」といったことだ(図4)。

図4●ソーシャル・イントラ実現に向けたヒント
図4●ソーシャル・イントラ実現に向けたヒント

 まず最も重要なポイントは、利用目的あるいは利用シーンをはっきりさせることである。メッセージやアクティビティーをタイムラインに表示するタイプのツールは、あくまでもコミュニケーションやディスカッションを深めていく用途に向く。

 これに対し、例えば従業員のスケジュールを共有する仕組みが欲しいのなら、従来型のグループウエアを使うべき。文書共有、文書の共同作成に主眼がある場合なら、Google Appsなど検索機能に優れた仕組みのほうが便利だろう。少なくとも、そうした機能を、タイムライン型のツールとは別に用意する必要がある(図5)。

図5●ソーシャル・イントラで注目されるタイムライン型ソーシャルウエアの機能面での位置付け
図5●ソーシャル・イントラで注目されるタイムライン型ソーシャルウエアの機能面での位置付け
基本的には大人数で使うインタラクティブなコミュニケーションツール。ただし、メッセージを蓄積することで情報共有やナレッジマネジメントにも利用できる。

最もシンプル、コミュニケーション活性化

 ソーシャル・イントラの最もシンプルな例は、会社内の組織に関係なく複数のメンバーが参加してコミュニケーションを図る使い方。まさしくFacebookに近い。

 Web制作会社のロフトワークは、オフィス内で従業員同士が交わす挨拶や簡単な連絡、簡易な業務報告などにYammerを利用している。導入のきっかけは、「採用した2009年当時、従業員が40人ほどの環境でも、組織の縦割り感が芽生えていたこと」(諏訪社長)。営業担当者にとっては、どの案件もやっと取ってきたもの。顧客の期待にはできるだけ応えたい。しかし開発は必ずしもそううまくはいかない。開発者側は、その案件を取ったこと自体に疑問を持つことさえある。

 こうしたギクシャクした環境では、顧客に対して良いサービスを提供できない。「原因は対話不足」とみた諏訪社長が考えたのがソーシャル・イントラだった。例えば出張から戻ったときの「お土産を買って来ました」などの、ごく単純なお知らせをはじめ、顔を合わせられなくても、とにかく対話できる仕組みとしてYammerを導入した。メールなど従来の仕組みではできなかった軽いコミュニケーションが、うまく動くようになった。利用し始めて2年以上。今は全従業員が、ごく自然に利用している。

 同じくYammerを利用する楽天の場合は、グローバルの全社約7500人にアカウントを与え、利用している。導入の狙いは、会社の方向性や方針を共有することと、組織の枠にとらわれない横の情報の流れを作ることである。

 同社がYammerを試すきっかけになったのは、かつて三木谷浩史会長兼社長を含め30~40人の従業員の有志で何度か開催した「寺子屋」という集まりでの議論。テーマは「これからの楽天はどうあるべきか」。その中で、参加者から「議論の内容を社内に広く伝えるべきだ」という声が出てきた。草の根的にYammerを利用しているメンバーがいたことに加え、個人的にFacebookを使っていてSNSについてのリテラシーを持つ従業員が増えつつあったことから、本格的にYammerを使ってみることにした。その後、東日本大震災の経験から災害時の連絡手段を多様化しておくことを意識し、その目的を兼ねてYammerを全社展開した。

 「Yammerによって、横の情報の流れを作れることを実感したのが、2011年のタイの大洪水だった」(Yammer活用を推進する吉岡弘隆・技術理事)。タイからは現地の様子を撮影した写真をYammerに投稿。これに対し、世界の拠点から自然に応援の返信メッセージが届いた(写真2)。メールやグループウエアではこうはいかない。コミュニティーとして利用しているツールだからこそ成り立つコミュニケーションだ。

写真2●楽天は社長をはじめ従業員がフラットに利用できるコミュニケーションツールとしてYammerを活用している
写真2●楽天は社長をはじめ従業員がフラットに利用できるコミュニケーションツールとしてYammerを活用している

 このほか、トークノートのTalknoteを利用しているKDDI、米IBMのIBM Smart Cloud for Social Businessを利用しているパナソニックも、ロフトワークや楽天と似たコミュニケーション活性化の用途でソーシャル・イントラに取り組んでいる。

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