本稿はクラウドストレージ・サービスの価値、およびその選択・活用ポイントを紹介する連載の第3回目となる。前回は、DR(ディザスタリカバリの略。被害からの回復措置災害復旧のこと)の基礎と代表的ソリューションを紹介した。今回は、クラウドストレージによる具体的なDR実現手法について述べる。

 前回、オンプレミス型システムのバックアップ先システムとしてクラウドストレージを活用すれば、災害/障害時に短時間でシステム復旧できる環境を自前設備を持つことなく安価に構築することができると述べた。では、どのようにしてクラウドストレージを用いて、システムバックアップとリストア(復旧)を行うのであろうか。

 これを理解するには、実際の事例を読む方が早いと思われる。そこで、介護サービス会社であるHelp At Home社の事例をまず紹介したい。

クラウドストレージのDR活用で3年間に15万ドルを節約

 この1975年に設立された米国企業は、米国12州に146の拠点を有し、1万3000人以上の外勤スタッフを雇用している。すべての拠点はシカゴにあるデータセンターとWANで接続されており、インターネットにもアクセス可能である。通信系システム、およびWindowsネットワークのアクセス権などを管理するドメインコントローラー以外の業務アプリケーション(ERPを含む)は、データセンターに設置したVMwareの仮想サーバー上ですべて稼働している。

 Help At Home社ではこれまで、バックアップ用のアプライアンスとiSCSI接続のストレージを導入し、自社アプリケーションが利用するデータベースとデータファイルの変更部分のみのバックアップを実施していた。

 同社がBCP(事業継続計画)を新たに策定した際、上記バックアップシステムだけではDRを実現できないことは自明であった。このため、DRシステムの再構築を検討した。その際、自前でDRサイトを構築する場合、3年間で約20万ドル(約1600万円)のコストがかかることが判明した。これは、新たなハードウエア、ソフトウエア、構築費用、通信費用、運用保守にかかる人件費などすべての費用の総計である。そして、その運用保守は自社スタッフが担当しなくてはならなかった。

 Help At Home社はSAN(Storage Area Network)を含む種々の代替ソリューションを検討したが、ITベンダーからの提案に魅力のあるものはなかった。そこで、インターネット検索による調査を自ら実施し、iland社のContinuity Cloudソリューションを発見した。

 このiland社によるクラウドサービスは、顧客企業の仮想マシンイメージを保管するクラウドストレージを中心としたソリューションである。毎晩、仮想マシンの複製をiland社のクラウドストレージに取得し、災害または障害発生時にはiland社のパブリッククラウド上にリストアし、各拠点からのデータセンターへのアクセスをiland社サーバーにリダイレクトする。

 これにより、システム復旧までの時間は、iland社でのリストア作業時間だけで済むことになり、非常に短時間となる。また、通常時は、仮想マシンイメージを保管するクラウドストレージはオフライン状態で稼働させれば良いので、低コストで実現できる。

 Help At Home社の場合、このクラウドストレージを利用したリカバリサービスの3年間のトータルコストは、約5万ドル(約400万円)であった。クラウドサービスを利用することで、極めて短いRTO(目標復旧時間)を達成できる。なおかつ自前でDRサイトを構築するケース(3年間で約20万ドル)と比べて、3年間で約15万ドル(約1200万円)ものコスト削減を実現することが可能になったのである。

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