バックアップデータを異機種のサーバーにリストアしたいというニーズが高まっている。背景には、東日本大震災に伴うディザスターリカバリー対策の強化や、仮想化/クラウド環境の利用拡大がある。バックアップソフトに、こうしたニーズに応える移行機能が搭載されてきた。
「バックアップソフトの使い方に、異変が起きている」――。こう指摘するのは、バックアップソフトベンダーであるアクロニス・ジャパンの吉田幸春氏(セールス エンジニアリング ディレクタ)だ。吉田氏によると、この1年でバックアップソフトへのニーズに大きな変化が表れたという。
従来のニーズは、「バックアップ元のサーバーでデータをリストアしたい」というものだった。ところが最近は、バックアップ元のサーバーではなく「異機種のサーバーにデータを移行してリストアしたい」というニーズが目立ってきた(図1)。
データだけあっても復旧できない
なぜ「移行」というニーズが強くなってきたのか。その理由について、シマンテックの浅野 百絵果氏(プロダクトマーケティング部 プロダクトマーケティングマネージャ)は「東日本大震災の影響が大きい」と説明する。
従来、バックアップソフトを使えば、アプリケーションのデータ(主にファイル)を定期的に保存し、障害時にそのデータを元のサーバー(あるいは同一機種のサーバー)にリストアすることで、システムを復旧できた。ところが「震災時に、バックアップ元のサーバーが故障した上に同一機種をすぐには調達できない事態に見舞われた。バックアップデータだけあっても、元のサーバーがないのですぐにはシステムを復旧できなかった」(浅野氏)。
ここに、バックアップデータを異機種のサーバーへ移行してリストアしたいというニーズが生まれた。これは、ディザスターリカバリー対策の一環といえる。
さらに前出の吉田氏は、「仮想化やクラウドといった環境の利用が浸透し、既存システムのバックアップデータをそうした新しい環境に丸ごと移行させたいというニーズも出てきた」と付け加える。これも、移行というニーズが強くなった背景にある。
従来も移行できたが手間がかかった
移行というニーズの高まりを受けて、バックアップソフトは進化している。
実は、従来のバックアップソフトでも異機種への移行は可能だった(図2上)。しかし実際に移行しようとすると、バックアップソフトの機能が乏しいために、手間と時間がかかった。
具体的には、リストア先のサーバー機を調達したあと、OSのインストール、サービスパックやパッチの適用、デバイスドライバのインストール、アプリケーションのインストールと設定、アプリケーションデータの復元――という手順を踏む必要があった。これらのうち、バックアップソフトによって効率化できる手順は、アプリケーションデータの復元ぐらいである。
一方、移行というニーズを受けて進化したバックアップソフトでは、リストアの手順が大幅に減る(図2下)。リストア先のサーバー機を調達し、バックアップソフトで作った起動CD-ROMを入れて起動するだけでいい。あとは、バックアップデータから、OS、デバイスドライバ、アプリケーション、アプリケーションデータまでを丸ごとリストアできる。このとき、OSのサービスパックやパッチの適用、アプリケーションの設定などは不要である。デバイスドライバについては、バックアップソフトによって、新しいサーバー機に合うものが自動で変換(再ロード)される。
このように、移行の手順が効率化され、リストアの所要時間を短縮できる。