スマートフォンやタブレットといった「スマートデバイス」はコンシューマ市場で急速な普及を見せている。こうした状況を受け、企業においてもスマートデバイスを活用して「業務効率の改善」や「新たなビジネスの創出」に繋げられないか、という期待が高まっている。

 そこで、今回は企業におけるスマートデバイス活用について考えていくことにする。

「活用シーン不在」がスマートデバイス普及の大きな障壁

 図1は年商500億円未満の企業に対し、「社内向けのスマートデバイス活用状況」を尋ねた結果である。ここでの「社内向け」とは企業で導入した端末、もしくは社員が所有する端末を自社業務において活用するケースを指している。

図1●社内向けのスマートデバイス活用状況
図1●社内向けのスマートデバイス活用状況

 スマートデバイスのビジネス活用には、SNSによるコミュニティの形成やGPS機能を利用した時限クーポンの発行などもある。ただし、これらは社員ではなくコンシューマが所有する社外の端末を自社サービスに活用するケースであり、図1の集計には含めていない。

 この結果を見ると、「社内向けにスマートデバイスを導入済みまたは導入予定」の企業は20~30%程度であることが分かる。スマートデバイスは様々なITソリューションの中では比較的速いペースで普及している部類に数えられるが、コンシューマ市場の勢いと比較するとやや緩やかな感もある。

 その要因を探る手掛かりとなるものが、図2である。これは年商500億円未満の企業に対して、「スマートデバイスを社内向けに活用しない要因(複数回答)」を尋ねた結果である。

図2●スマートデバイスを社内向けに活用しない要因(複数回答)
図2●スマートデバイスを社内向けに活用しない要因(複数回答)

 図2では「活用しない要因」として、最近注目を集めている「BYOD(Bring Your Own Device:私物デバイス活用)」と深く関係する「端末の購入コストが負担である」や、セキュリティ対策も含めた「端末の管理コストが負担である」といった項目が挙げられている。

 だが、ここで注目すべきなのは「自社業務の中で必要となる場面がない」という事由が多いことである。しかも、この回答の比率は、企業規模が小さくなるに従って増加している。つまり、中堅・中小企業も含めた広い裾野にスマートデバイスの活用を広げようとすると、「スマートデバイスをどう活用したら良いかわからない」といった本質的なニーズの不在が大きな障壁となる可能性が高い。

 また、スマートデバイスの活用例としては「スケジューラやメールの閲覧」や「社内業務システムへのアクセス」が挙げられることが多い。確かにフィーチャーフォンと比べ、スマートデバイスでは大画面で高度な操作を行うことができる。だが、こうした活用シーンが必須の企業では、そのためにノートPCを既に採用しているケースが少なくない。図2でもそれを裏付けるように、「ノートPCで既にニーズは満たされている」が多く挙げられている。

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