東日本大震災で浮き彫りになった「想定外」の一つに、安否確認システムがある。その多くが役割を果たさなかったのだ。

 安否確認システムのほとんどは、確認手段として携帯電話メールを使っていた。これがあだとなった。NTTドコモでは震災直後、サーバーから携帯電話へのメールの約85%が遅延した。KDDIやソフトバンクモバイルの携帯電話でも音声通話が急増し、メール着信通知が遅延した。

 その結果、携帯電話に安否確認のメールが届くまでに時間がかかり、従業員の被災状況を確認しきれない企業が多かった。

 従業員が安否確認システムに慣れていなかったことも、震災で機能しなかった一因だ。これらを教訓として、今後の災害に備えた見直しを進める必要がある。

災害時にアクセスするのが当然

 携帯メールに頼らない安否確認システムを使っている1社が、東京海上日動ファシリティーズだ。災害時に使う「災害情報システム」を自社開発し、2006年から利用している。震災時には「発生から半日足らずで、社員500人全員の安否を確認できた」と金子栄一代表取締役は話す。

 災害情報システムの特徴はメールを使用せず、従業員がWebブラウザーを使って自発的にアクセスする仕組みになっていることだ(図1)。「携帯メールはアドレスを変更する従業員が多く、災害時の連絡には向いていない」(金子取締役)。

図1●東京海上日動ファシリティーズが開発した「災害情報システム」の画面
従業員は大きな災害時に、安否情報や管理業務を請け負う建物の被災情報を、自発的に登録する
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 従業員500人にとって、災害時に災害情報システムにアクセスして情報共有することは当たり前になっている。一定基準以上の災害が発生した場合、安否確認情報を登録しなければならないというルールを設けているからだ。

 具体的には、県庁所在地や政令指定都市では震度5強以上、または全国どこでも震度6弱以上の地震が発生した場合に、従業員は情報を登録する必要がある。

 さらに管理を請け負っている建物の状況をはじめとする業務に関連する被災情報を登録・参照する機能や、掲示板機能も提供する。災害時に気になる顧客の情報も、安否情報と共に確認できる。

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