情報システムを構成する製品の選定が難しくなっている。パッケージソフトやOSS、クラウドなど選択肢が増えたからだ。情報をどう集め、どう整理・分析するのか。第一線のエンジニアにそのテクニックを聞いた。

 「とにかく慎重に選ぶことを考えた」――。就職・転職・進学情報の提供などを手掛けるマイナビの薄井照丈氏(システム統括本部 業務システム統括部 部長)は、2011年末に導入したBI(Business Intelligence)ソフトの選定作業をこう振り返る。候補となるBIソフトの種類は多く、どれを選べばよいか分からない。製品選定に失敗すれば、導入後の効果にも影響が出る。そのため薄井氏は、綿密に製品選定プロセスを考えた。過去に製品選定で苦い経験を味わった反省を生かしてのことだった。

過去の経験からプロセスを導く

 図1に示したのが、そのときのプロセスだ。大きく「情報収集」と「整理・分析」という二つのステップに分けられるこのプロセスは普遍的な流れであり、多くの製品選定の現場でも参考になるだろう。

図1●過去の経験を踏まえて導き出した製品選定プロセス
製品選定には、大きく「情報収集」と「整理・分析」の難しさがある。マイナビの薄井照丈氏は、こうした難しさを克服するために、製品選定プロセスを着実に踏むことを心掛けた
[画像のクリックで拡大表示]

 具体的な流れはこんな具合だ。まず、製品の候補を製品情報サイトからリストアップし、7製品程度に絞り込んだ。次に、システムの大まかな概要を簡潔に定義し、それを製品ベンダーに伝えて個別面談を実施。薄井氏は面談で、カタログにない情報を中心に確認し、一部の製品ベンダーからはBIソフトを借り受け、実機検証による要件との適合性評価も行った。その結果、明らかに要件を満たせないと判断した製品を除き、5製品程度に候補を絞り込んだ。ここまでが、(1)情報収集の作業である。

 続く(2)整理・分析では、製品の評価項目を設定し、RFP(提案依頼書)を作成した。その上で再び製品ベンダーとの面談に臨み、提案書と見積書を受け取る。その結果を評価シートに記載して採点し、最終的な製品を決定。関係者との合意形成へと進んだという。

 2カ月近い期間を要したものの、薄井氏は「選定プロセスを着実に踏まなければ、ベストな製品を選定できなかった」と話す。

選択肢が広がり難しさが増す

 このように製品選定の難しさを感じ、現場で工夫を凝らしている例は少なくない。ここにきてパッケージソフトやオープンソースソフト(OSS)、クラウドなどの広がりで、ITの現場には製品の選択肢が増えているからだ。大切なのは、図1のような製品選定プロセスを着実に踏むこと。情報収集と整理・分析という二つのステップで、さまざまなテクニックを現場で実践する必要がある。

 そこで以下では、二つのステップに分けて、現場の製品選定、つまり目利きのテクニックを紹介しよう。

 なお、本記事で取り上げる製品は、特に選定が難しいパッケージソフト、基盤ソフト、クラウドを指す。製品の仕様が比較的分かりやすく、スペックやコストから選定しやすいサーバーやストレージといったハードウエアは対象としていない。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。