この連載では、市場で話題の製品・サービスとその主要ベンダーを取り上げて、「ユーザー企業は、ベンダーとチャネルをどう見極めるべきか?」という観点から解説している。

 今回のテーマは、中堅企業の基幹業務システムの実績で圧倒的な強さを誇るオービックである。中堅・中小企業を対象にした販売展開を志向するベンダーは多いが、高いシェアを獲得し、ユーザーからの高評価を得ているベンダーは少ない。

 オービックは最激戦エリアと言われる年商100億円以上の中堅企業の業務システムに特化したソリューションを提案しており、年商100億円-500億円の企業向けに高い実績を誇る。多くのベンダーから常に最強の競合相手と見なされ、ユーザー企業からの信頼も厚い。

「オービック?ああ勘定奉行の会社」ではない

 IT業界関係者においても、(筆者のまわりでも)オービックを勘違いして覚えている人は確実にいる。会計パッケージの「勘定奉行」のオービックビジネスコンサルタント(以下、OBC)はマスメディアで頻繁に広告を露出させており、そのブランドは幅広く認知されている。ただ、OBCはオービックが資本参加している関連会社ではあるが、会計パッケージを中心とした中小企業市場を主戦場としている。これに対してオービックは、基幹業務ソリューションを中堅企業に展開しており、両者はすみ分けて存在している(表1)。

表1●関連会社の一覧と企業説明
表1●関連会社の一覧と企業説明
※1)オービックシステムエンジニアリング、オービックビジネスソリューションの2社は2012年10月1日付けでオービックに吸収合併される。目的はグループ事業のより一層の強化と経営のスピードアップ、経営の効率化を目的としたものである。このように外注ではないが、内部の子会社が開発やサポートを委託している。そのほとんどがオービックの拠点と居を共にすることが多い。
※2)「オービックの拠点」
東京本社・大阪本社(2本社体制:もともとは大阪が本社)
 支店:横浜支店、北関東支店、名古屋支店、福岡支店、京都支店
 営業所:松本営業所、静岡営業所、広島営業所
オービックはこの拠点でサポートできる範囲で販売展開している。
写真1●青木功氏が登場するオービックのコマーシャル
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 オービックの正しいイメージは、プロゴルファー青木功が登場するコマーシャルのコーポレートスローガン「システムインテグレータのオービック」である(写真)。システムインテグレータ(SIer)として独立してから40年以上の経歴を持つ、老舗中の老舗がオービックなのだ。

 1968年に野田順弘社長(現在は代表取締役会長兼社長)が独立して、株式会社大阪ビジネスを設立。その後、社名をオービックに変更した。

 コンピュータの取り扱いは三菱電機のオフコン「MELCOM 80」で始まり、続いて富士通のオフコン「Kシリーズ」を扱うようになった。

 オフコンからPCサーバーへの移行、いわゆる“システムのオープン化”が盛んになった1997年のタイミングで、自社製システム「OBIC7」を発売。OBIC7は会計、人事給与、販売、生産管理などのモジュールに分かれていた業務システムを、ERP(統合業務システム)としてアップグレードさせたものであり、同社はオフコンユーザーをPCサーバー上のOBIC7のシステムを移行させることで、ユーザー資産の転換に成功した。

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