この連載では、市場で話題の製品・サービスとその主要ベンダーを取り上げて、「ユーザー企業は、ベンダーとチャネルをどう見極めるべきか?」という観点から解説している。
今回のテーマは、中堅企業の基幹業務システムの実績で圧倒的な強さを誇るオービックである。中堅・中小企業を対象にした販売展開を志向するベンダーは多いが、高いシェアを獲得し、ユーザーからの高評価を得ているベンダーは少ない。
オービックは最激戦エリアと言われる年商100億円以上の中堅企業の業務システムに特化したソリューションを提案しており、年商100億円-500億円の企業向けに高い実績を誇る。多くのベンダーから常に最強の競合相手と見なされ、ユーザー企業からの信頼も厚い。
「オービック?ああ勘定奉行の会社」ではない
IT業界関係者においても、(筆者のまわりでも)オービックを勘違いして覚えている人は確実にいる。会計パッケージの「勘定奉行」のオービックビジネスコンサルタント(以下、OBC)はマスメディアで頻繁に広告を露出させており、そのブランドは幅広く認知されている。ただ、OBCはオービックが資本参加している関連会社ではあるが、会計パッケージを中心とした中小企業市場を主戦場としている。これに対してオービックは、基幹業務ソリューションを中堅企業に展開しており、両者はすみ分けて存在している(表1)。
オービックの正しいイメージは、プロゴルファー青木功が登場するコマーシャルのコーポレートスローガン「システムインテグレータのオービック」である(写真)。システムインテグレータ(SIer)として独立してから40年以上の経歴を持つ、老舗中の老舗がオービックなのだ。
1968年に野田順弘社長(現在は代表取締役会長兼社長)が独立して、株式会社大阪ビジネスを設立。その後、社名をオービックに変更した。
コンピュータの取り扱いは三菱電機のオフコン「MELCOM 80」で始まり、続いて富士通のオフコン「Kシリーズ」を扱うようになった。
オフコンからPCサーバーへの移行、いわゆる“システムのオープン化”が盛んになった1997年のタイミングで、自社製システム「OBIC7」を発売。OBIC7は会計、人事給与、販売、生産管理などのモジュールに分かれていた業務システムを、ERP(統合業務システム)としてアップグレードさせたものであり、同社はオフコンユーザーをPCサーバー上のOBIC7のシステムを移行させることで、ユーザー資産の転換に成功した。