プロマネツールをクラウド上で提供するサービスが続々と登場している。開発現場にとってどんなメリットがあるのか。具体的なツールの機能を見ながら探っていこう。

 2010年夏、食肉流通会社のフードリンクは「プロジェクトマネジメントツール(以下プロマネツール)」を導入した。きっかけは、基幹システムの刷新に伴うERPパッケージソフトの導入プロジェクトが思うように進まなかったからだ。プロマネツールを活用して現場の作業や問題を見える化し、プロジェクトを円滑に進めようと考えた。

 ここまではよくある話かもしれない。注目すべきは、同社のプロマネツールの利用はこれが初めてだったこと。そして現場の背中を強く押したのが、SaaS(Software as a Service)型の「クラウド版プロマネツール」の存在だったことだ。最近続々と登場するクラウド版プロマネツールに、開発現場の問題解決を求めるこうした動きが、増え始めているのである。

1000万円の機能を数万円で使える

 同社が導入したのは、システムインテグレータがクラウド上で提供するプロマネツール「SI Object Browser PM on Cloud」。1ユーザー当たり月額6500円で利用できる。「パッケージ版のプロマネツールを利用するには、サーバーを含めて初期導入コストが1000万円近くかかる。それがクラウド版なら、機能は同じで月額数万円で導入できた」。プロジェクトを統括した福永 大希氏(管理部 情報システム担当部長)はこのように述べ、これまで使いたくても高額で手が出なかったプロマネツールの“進化”を歓迎する。

 福永氏はまた、「サーバーの調達・構築が不要で、申し込んでからすぐに使える利点も大きい。プロジェクトが終われば利用をやめればよい。投資対効果も出やすい」と説明。利用している機能はタスク管理やスケジュール管理とまだ一部に限られる。それでも利用から1年余り、「進捗遅れの作業がすぐに把握でき、迅速に手を打てるようになった」(福永氏)と、その効果を実感している。

第二の普及期到来か

 クラウド版プロマネツールと聞いて、ピンとこない人がいるかもしれない。これまでプロマネツールといえば、米Microsoftの「Microsoft Project」が代表だった。プロジェクトの高度化やプロジェクトマネジメント技術の普及によって、2000年以降、急速に普及してきたツールである。

 ところがこの状況が、今後一変しそうだ。この数カ月の間にクラウド上で提供されるプロマネツールが次々に登場し、これまでツールを使っていなかった開発現場に広がり始めたのだ。しかもその用途は、Microsoft Projectの機能の中心だった「タスク管理」や「スケジュール管理」にとどまらない。テスト管理や成果物管理、情報共有の基盤へと拡大している。プロマネツールの定義を改める動きであり、その手軽さや低コストで導入できることを考えると、プロマネツールの第二の普及期が訪れたといってもいい。

 携帯電話/スマートフォン向けアプリケーションを開発・提供するイードも2011年7月、クラウド版プロマネツールを本格導入した1社だ。同社の利用目的は「情報共有」であり、利用対象がプロジェクトマネジャーでなく、メンバーなのが特徴だ。パッケージからクラウド上にプロマネツールが移ったことで、その用途に変化が表れた象徴的な例である。

 イードが導入したのは、世界で10万人以上のユーザーを持つ韓国製クラウド版プロマネツール「TeamOffice」(ダウジャパン)。5ユーザーで月額2000円と、初期導入コストを抑えた。

写真1●テスト管理にクラウド版プロマネツールを使うイード
写真1●テスト管理にクラウド版プロマネツールを使うイード
携帯アプリの膨大なテスト結果をメンバー10人で共有している。初期導入コストが安く手軽に始められる、いつでもどこでも情報共有が可能などの点がクラウド版ならではの魅力という

 イードはこのツール上で、端末ごとに実行したテスト結果を、画像や動画によるエビデンス(証跡)データとともに共有している(写真1)。同社の金河 愛子氏(事業開発本部 funboo事業部)は「プロジェクトで大事なのは、管理よりも情報共有」と指摘し、約10人のメンバーがどこからでもいち早くテスト結果を確認できるプロジェクト基盤を作りたかったと説明する。

 テスト結果を登録すると、メンバー全員にその旨をメールで通知する機能が同ツールにはある。「こうした機能を使うと、問題点の早期発見につながる。従来のようなExcelによるテスト管理では時間がかかりすぎて、もう戻れない」と、金河氏は訴える。

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