前々回前回は「既存の業務システムをクラウドへ移行する際の課題や今後の展望」を基幹系システム(会計、人事/給与、購買/販売、会計、生産/調達、物流/在庫、ERPなど)と情報系システム(メール、グループウエア、SFA、CRMなど)ごとに見た。

 今回は運用管理系システムを取り上げる。ここでの運用管理系システムとは、セキュリティ対策、資産管理、稼働監視といった情報処理システム全般の安定的かつ安全な運用をサポートする役割を担うシステムを指す。

運用管理系はアプリケーション変更を伴うSaaS移行が可能

 まず、基幹系システムと情報系システムのクラウド移行における課題と解決方法について、簡単に振り返っておこう。

基幹系システム:
 独自カスタマイズやシステム連携などの要因によって、システム自体の維持コストが負担となりやすい。クラウドが登場した当初、ユーザー企業は「SaaSへの移行によってそれらの課題を解決できる」と期待した。だが、既存システム全体をSaaSへ移行するアプローチだけでは独自カスタマイズやシステム連携に起因する課題を解消することは難しい。そこで、対策としては以下のようなものが考えられる。

  1. 経費精算など特定の業務場面において補完的にSaaSを活用する
  2. 既存システムをIaaS上へ移設してハードウエアやネットワークといった基本インフラの運用管理における負担やコストを軽減し、その分を基幹系システム自体の改修に充てる

情報系システム:
 基幹系システムと比べると、クラウド移行における技術的な障壁はそれほど高くない。しかし、ほぼ全社員が日々利用するアプリケーションが多いため、「慣れ」に起因する変化への抵抗が強い。これが高機能であり、かつ無償または安価な基幹系システムのSaaSが登場しているにも関わらず、シェア変動が起きにくい要因の一つとなっている。

 一方、ユーザー企業が自ら作成する簡易なアプリケーション(ちょっとした顧客管理や案件管理など)については、Force.comなどPaaSの登場によりクラウド上に実現するという選択肢が現実味を帯びている。こうした簡易なアプリケーションにはメールやスケジューラといった情報系システムとの連携ニーズも高い。こうした動きを全て加味すると、今後は簡易なアプリケーションをクラウド(主にPaaS)上で構築/運用する動きに牽引される形で、アプリケーション変更をせずに既存の情報系システムをSaaSへと移行するという流れが出てくるものと予想される。

 それでは運用管理系システムのクラウド移行はどうだろうか。基幹系システムのように独自カスタマイズやシステム連携が必要となる場面は少ない。環境やポリシーに応じて構成や設定を変えることはもちろんあるが、運用管理系システム自体を改変しているケースは極めてまれだろう。情報系に見られた「慣れ」に起因するアプリケーション変更の障壁も低い。サーバー側の運用管理システムはもちろん、PC向けのセキュリティや資産管理のアプリケーションについても個々の社員が日々操作をするわけではないからだ。

 このように考えると、運用管理系システムにおいては「アプリケーション変更を伴うSaaS移行」が可能ということになる。実際、PCを対象としたセキュリティや資産管理の分野では、中堅・中小企業を中心にそうした動きが活発になりつつある。

 このように運用管理系システムは、基幹系システムや運用管理系システムとは少し異なる状況となっている。だが、「クラウドありき」で話を進めてしまうのは禁物だ。クラウドという枠を取り払った状態で運用管理系システムの課題を俯瞰(ふかん)し、そこからクラウド活用のポイントを見ていくことにしよう。

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